不穏は未だⅡ 2
「どこかボーっとしているような、心ここに在らずといった様子だったそうだ。体調が悪いのか、くらいにしか考えていなかったようだ。返事も普通にしていたそうだし、違和感にまでは至らなかったんだろう。」
風邪をひいた時に思考が定まらず、呆けているようになってしまうのは良くあること。それに似た状態であったのなら、確かに家族としては心配こそすれ、怪しいなんて思いもしないだろう。…だとしたら未知のウイルスによる記憶障害だろうか。でもそうだとしたら、何故家族には移らずにいられるのだろうか。それに戦いの際、彼らは健康そのもののように見受けられたが、あの時は治っていなかったと言うのか。
考え始めればキリが無くなり、どれを取っても違和感しか感じない。何かもっと他にあるような…、見落としている何かが…。
「次いで魔法使いだが、奴も同じく記憶を失くしていた。しかも最悪なことに今までのほとんどを、な。これに関しては意図的なものを感じるとは思っているが。」
「魔法使いはほとんどの記憶を…?意図的に…。」
意図的、が正しいと仮定をして考える。裏にいる人物が手を引いている、もちろんバレてしまいたくはない。ではどうする?私なら闇属性の精神干渉を使うだろう。精神干渉は言わば、操り人形のようにするもの、アルカートとアーデストを含めほとんどの国で禁術となっているものだからこそ使う。なぜなら対処の仕方を知る者が殆どいないから。禁術故に習得するにも困難を極めるからか、そもそも闇属性の人間がほとんどいないからか、対処出来ない。
でもそれはやはり無いだろうな、とも思う。なんせ闇属性を持つ者は、近隣国も含め探しても分かっている限り、私ただ一人だけである。つまりは私であれば可能だが、他者であれば不可能ということ。不可能を可能にすることなど容易ではない、それこそ何かを代償にしなければ…。
「代償…。記憶を消して、操る…。闇以外で…使える?」
私から溢れた一人言に、先程まで話していたユリウス達が静かになった。
「クレア、もしかして君は魔法で記憶を消した、と考えているのかい?」
陛下が真っ先に反応し、私に問いかける。確かに消したとは思い始めている、ただそれは魔法…というには違う物の気がしてならない。悩んでいるのが見えたのか、ゆっくりで良いから教えてほしい、と言われ言葉を選ぶ。
「陛下が仰られたように、何者かに記憶を消された、もしくは操作されたと考えています。ただそれは魔法なんかじゃない、全く別の物だとも思うのです。」
精神干渉は闇属性のもの、それにあくまで精神に作用するだけで記憶だけを消す、なんて芸当は出来ない。だからこそ魔法じゃない何か…それこそ昔に絵本で読んだような…。
「呪いの壺…!」




