不穏は未だⅡ 1
温室はガラス張りで囲われた部屋で、中からも外の景色が見える。中で草木や花々を楽しみながらも、天気の良い日ならガラスから差し込む陽の暖かさを感じながらくつろげる場所となっている。今日は生憎の空模様となってしまったが、それでも室内の暖かさもあり、過ごしやすくなっていた。ただ一つ、そこに集まっている顔触れがその過ごしやすさも忘れさせてしまうが。
今一つのテーブルを囲んでいるのは私と王妃殿下、ユリウス。そして何故か陛下とノイルもいる。王家が勢揃いの中での居心地は良くはない、が全員が揃って話をするのならば余程重要なことであろう。目の前に置かれた紅茶で緊張をほぐそうと一口飲む。
「さて、クレアも来たことだし話を始めましょうか?」
優雅に紅茶を嗜みながら、王妃殿下が皆に問いかける。ユリウス達は目配せをし、頷く。おそらく先程の目配せは誰から話すのか、を決めていたようで最初に口を開いたのはユリウスだった。
「では私から。…クレア、今日君に話しておきたいことはアーデストに移動中に会ったならず者達の件だ。」
ならず者達…日々の忙しさで忘れてしまっていたが、捕縛をした後のことは一切聞かされておらず、彼らの目的が分からずじまいになっていた。途中で泊まった街から流れていた人達は、どうしてわざわざ街を出て、危険と隣り合わせの賊のようなことをしたのか。その中で唯一魔法を主体としていたあの人物は一体何者なのか。
「結果から伝えれば…彼らは何も覚えていなかった。」
何も覚えていない…?武器を手に取り戦っていたことを何一つとして?
「それは…彼らが知らぬ存ぜぬで通そうとしているとかではなく…?」
考えうる可能性はこれが一番だ。気付いたら捕まっていた、何もしていないのだから釈放してくれ、と。素直に話をし、罰を受ける者がいれば、白を通し逃れようとする者だっているだろう。
「そうではなかった。全員が出て行く前日まで記憶はあった。が、そこからここで目覚めるまでの記憶が一切ない。これは再度街に遣いをやって、家族達からも証言を得ている。」
資料を渡され、上がっていた報告を読めば確かに偽っている様子は無い。ただ気になる点が一つ、家族達からの証言で上がっていた。
「…この出て行く当日、普段と違った様子であった、と記載がありますが、具体的にはどんな様子であったのでしょうか?」
これだけを見てしまえば、人に言えないことをしに行くような、疑われることが避けられないような気がしてしまうのだが。犯罪を犯す、犯した者は罪悪感からか普段と違う行動を起こすと言う。だが、ユリウスは証言を得た上で違うと言っている。ということは、私が想像しているようなものとは異なる。




