不穏は未だ4
「私のお茶会に招待した子がまだ来てないから、心配で見に来たのだけれど。ドリアード侯爵、知らないかしら?」
「お、王妃殿下!これはこれは…。もしやお探しの方はクレア嬢ですかな?道に迷われていたようで…。」
「そう、有難う。ではクレア、皆が待っているわ。一緒に行きましょう?」
助け舟を出してくれたのは王妃殿下であった。王妃殿下はドリアードの言い訳を聞かず、私のもとに来てこの場を離れようとしてくれる。王妃殿下に連れられ歩き始めようとすると、ドリアードが諦め悪く話しかける。
「王妃殿下!お茶会は誰がご出席で?宜しければ私もクレア嬢とお話を…。」
「貴方に教える必要はありません。…それよりもドリアード?貴方、ここで談笑をしている暇があるのかしら?」
王妃殿下がドリアードの方を向き、先程までの優しさが微塵も感じられない、冷たさと鋭さを含んだ声音を出す。ドリアードは怯みながらもその場を動こうとはせず、でも…と言葉を続けようとする。
「貴方が管理する領地の民、どうにか飢えを凌いでいる様子ですね?各街や村からの嘆願書が届いているのですが…どういうことでしょうね?」
領地の民が飢えている…?その割にはドリアードの服を見ると、上質な素材を使った高価なものを着ているように見えるが…。真っ先に思い付いたのは、税収…お金はもちろんのこと、領地で育てた麦や野菜、家畜などが異様に高いこと。アーデストでは税の納付をする際、お金か作物等かを選択出来るようになっている。お金がある者からはお金を、無い者からは作物を。但し、それも民に負担にならない程度に、商会や経営者からは多くを、そうでない者からは少なく取るのが基本である。それなのに街や村から多くの嘆願書が送られてくる、ということは税の過剰徴収しか無い。干ばつで作物が育たない、食べるものがない、そういう時に納められた作物を配るために、飢餓が起こりえる可能性は少ない。
「確かに税収の一部は国に納めるようになっています。しかし、それは領地に影響を与えるほどのものでは無いはず。その年の物価や収穫量に応じて変えていますからね。」
「そ、それは…。」
王妃殿下も分かっているのだろう、ドリアードを容赦なく詰める。民があってこその国、と良く言っているからドリアードの所業を許せないのだろう。反論をさせることもなく、指摘している。
「貴方が今すべきは領民の生活を安定させること。それが出来ないのであれば、私達も考えねばなりません。…肝に命じておきなさい。」
これで話は終わりだと言わんばかりに、ドリアードに背を向け私に、行きましょうと声をかけて歩き始める。後ろからはもう声は聞こえず、ホッと安心をした。そして少し前を歩いている王妃殿下に、いつも助けてくださって有難うございます、と言うと不思議な答えが返ってきた。
「気にしないで。アリアスの大事な子だもの、私が守れる時は守ってあげるわ。…アリアスにしてあげれなかった分ね。」
何故ここで母の名前が出てくるのだろうか。母から王妃殿下の話を聞いたことは一度もないのに、王妃殿下は母を知っている。それに母にしてあげられなかった分、とは一体…。
浮かんできた疑問を考えていれば、王妃殿下はふふっ、と笑った。
「また今度お茶会をしましょう、その時に貴女の疑問の答え、ちゃんと教えてあげるわ。」
それだけ言い、温室まで二人で向かった。




