広がりだした世界3
隣国からの重要人物なだけあって、割り与えられた部屋は立派なものであった。
応接の間がしっかりとあり、そちらに通される。
ユリウスは私を座らせると侍女を呼び、お茶の準備をさせる。
丁寧に入れられたハーブティが目の前に置かれた。匂いが漂い、それだけでも十分心が解れてゆく。
「ハーブティを飲んで心を落ち着けるといい。」
ユリウスにそう促され、口をつける。
ほぉ、と息が漏れそうなほどに美味しかった。そのおかげか、見送った言葉が出てきた。
「王太子殿下、先程は助けてくださりありがとうございます。殿下が来てくださらなければ、私は…」
…きっと倒れていた、ヨハネスの視線で。
「礼など必要ない。当たり前のことをしただけだ。」
招待状を送ったことを後悔しているような、そんな表情をしながら答えられる。
だけども、私としては心からユリウスに責任は無いと思っている。何と言ったら伝わるだろうか?
「あの…私、今日来たことを一切後悔をしていないのです。招待状をいただいた時からずっと、今日を迎えることを待ち遠しくいたのです。」
ありのままを話してみると、あれ程出てこなかった言葉が湧き出てくる。その勢いに任せ、重ねてゆく。
「確かにあの出来事は予想外でした。それでも殿下がそばに来て、私を支えてくれて…。その時に不安や恐怖はすぐに無くなったのです。」
だから…これ以上は気にしないでほしい、と伝えると気持ちがスッキリした。ちゃんと伝えたいことを伝えたいままで言えた。
本心を聞いたユリウスの表情も柔らかくなっていた。
「クレア嬢にそこまで言ってもらえたのならば、気にしないことにしよう。しかしあの令嬢の気の短さには驚愕するな。…まぁそれよりも、折角の茶会だったのだからここで少しばかりしないか?」
ユリウスからの予想外で素敵な提案に、胸が躍る。少しばかりの心残りだったから。
喜びを出しながら頷き、二人だけのお茶会が始まった。