浅く広く、でも確かに7
「あの…『堅牢』には何かデメリットがあるのでしょうか?地形や天候によって制限がされてしまう、とか。」
地形によって効果を損なうものは多々ある。水中で水魔法の攻撃をしても消えてしまうものがあったり、乾いた空気では土魔法が壊れやすくなるなど。ただ光属性の魔法に、そんな制限がある魔法を知らない。光を打ち消せるのはただ一つ、私の闇属性のみ。だから考えても分からず、疑問を口にするとすぐに答えてくれた。
「制限はない。ただもっと簡単なことだ、魔力を消耗し続けるんだ。『堅牢』って簡単に言えば、内にも外にも防御壁を作ってるようなもんだ。それも普通のよりもかなり強固なのをな。」
そこで漸く理解する、何故ユリウスがあの場面で使わなかったのかを。防御壁自体、使用している間は魔力を消耗する。ただ消耗具合は壁にどれだけの魔力を使用するかによって左右される。強度を高めて展開すれば、魔力はより多く使用し、維持をするにも同じだけ消耗していく。それを単純に二つ、強度を高めて使っているとなれば、魔力の余力など残せるはずもない。
「だから、ユリウスはあの時に使わなかったんだろうな。いざとなったら、皆を安全な場所に転移させる為に、な。」
ユリウスは常に自分よりも誰かを守るために戦って、それが叶わなかった時のことまで考え、動いていた。先まで考えていたからこそ、私が出てしまったことでそれが狂ってしまった。これは怒られて当然のことで、むしろ怒られただけで済んだのを有難い、と思わなければいけない。…だけど、私にだって思いがあったことはちゃんと伝えなければいけない。たとえそれで喧嘩になろうとも、そうしなければ同じことを繰り返してしまうのだろうから。
「ノイル様!私にこの『堅牢』を…いえ、貴方様の持てる全てをご教授いただけませんか!」
ユリウスと話し合うためにも、これからのことも含めて、私が強くならねば説得など出来ない。守られるだけの存在ではないと。
「…成る程、クレアにとってユリウスはそれ程までに大事な存在なんだな。」
大事な存在…確かにその通りである。代わりの効かない、ただ一人の…。
「はい。初めて出来た大切な友人です。」
ノイルは私の言葉に、鳩が豆鉄砲を食ったような表情をした。何かおかしな表現をしてしまっただろうか。特段変わったことを言ったつもりはなかったのだが。
「…友人、ね。とてもそうには見えないが…これは俺が口を挟むことじゃないな。」
ボソボソと独り言を呟くように言った言葉を聞き取れず、首を傾げるとノイルは咳払いをした。
「まぁ、そのうち気付くだろうさ。…魔法に関する知識、技術は俺が教えられることは全て教える。君が弱音を吐こうが、途中で投げ出すのは認めない。いいな?」
途中で投げ出すなどあり得ない。新しい世界を開く機会があるのだから、それを自ら手放すような真似は絶対にしない。
強く頷くとノイルは、まずは堅牢からだ、と言って授業を始めた。




