浅く広く、でも確かに6
そう言って指をパチン、と鳴らせば、周りの景色が一転する。先程まで図書室にいたはずなのに、今は周りに何もなく、ただならされた地面が広がる場所へと移っていた。これは…。
「転移魔法を…お使いになられたのですね…!しかも正確に!」
ノイルの使える魔力量は分からないが、人を二人、正確な位置に転移させた。しかも転移を使う際に集中していた様子もない。ユリウスが転移を行なった際には、ギリギリまで集中をして漸く、というレベルだったのに。もちろん、あの時と転移させる人や物の差はあるといえど、さも容易いことのように行えてしまうのは、ノイルが言った通り魔法が得意なのだろう。
目を輝かせて話す私を笑いながら見る。
「これで実力はまぁ、分かったろ?本当は魔法の知識から、と考えていたんだが…クレアはどうも部屋に篭りやすいし、無茶をするらしいからな。」
部屋に篭ってしまうのは事実なので反論の余地はないが、無茶とは…。もしかして、あの時のことを言っているのだろうか。陛下や妃殿下から言われたことが無かったから、誰も知らない、ユリウスやエイリー達くらいしか知らないと思っていたがどうやら伝わっていたらしい。
「誰かを守ろうとすることは悪いことじゃない、だが自分の実力が追いついていないうちに、やろうとするのは間違いだ。下手をすれば、守りたいものすらも危険に巻き込む。」
そして再度指を鳴らすと、周りに結界が張り巡らされる。これは防御壁…にしては何故か違和感を感じる。訝しみながら近寄り、触れてみて分かった。手が壁に触れているように、壁の外へは手を出せなかった。つまりはこの防御壁は外部の攻撃から守るものではない、内側からの攻撃に対して作用するものだと。防御壁は簡易な籠城戦としても使われることがある、故に外側は強固な壁を築くが、内側からは魔法や武器を振えるようにすり抜ける仕組みになっている。それが出来ず、おそらく内も外も壁で覆われているこの結界は、防御壁というより牢と言った方が正しい気がする。
どんな構築なのかと熱心に見ている私に、ノイルが笑いを堪えながら教えてくれる。
「そんなに興味を持ってもらえるとはな。これは光属性で構築した『堅牢』って魔法だ。名の通り、中からも外部からも手出しができない。」
堅牢…確かに敵対する者を閉じ込めておくには最適だ。戦わずして無力化出来るのだから、戦場でも重宝しそうなものだが…。そこで新しく疑問が生まれる。思い返すのはならず者と戦っていたユリウス。ユリウスは光属性を使って戦っていたが、この魔法を使用していなかった。使わなかったのか、もしくは使えなかったのか。




