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闇の令嬢、愛を思い出す  作者: 雨音祭
76/165

浅く広く、でも確かに5

「これは失礼した、俺はノイル・アーデストだ。ここで司書をしているもんでね、君をよく見かけるなと思ってたんだ。」

司書か、ならば不思議ではない…が、それよりもサラッととんでもないことを言わなかったか。アーデストの姓を名乗ったように聞こえたが、ユリウスに兄弟はいないと聞いていたが…。

私の考えは本当に分かりやすいらしく、ノイルは笑いながら答えてくれた。

「俺は現国王の弟さ、歳は十離れているがね。…あー、畏まらなくて良いからな、俺はそういうのが嫌でここにいるんだから。」

「そうだったのですね…。殿下からは兄弟はいない、と伺っていたものですから…不躾に失礼いたしました。」

そう言うと、ノイルは頬をかき少し困惑した表情をする。…この表情は、陛下や妃殿下にもされた気がする。おそらく、というより確実に、この話し方が堅苦しいからなのだろう。

「…申し訳ありません、私はこれが通常の話し方ですので…なるべく善処いたします…。」

頑張ることではないのかもしれないが、人と関わりをあまり持たずに来てしまったのだから、慣れていくしかない。覚えることの最優先だ、と思っているとふと、頭を撫でられる。

「君が楽な話し方ならそれで良い、無理に変える必要はないさ。俺もこんな話し方だが、気にしないでくれ。」

父以外に初めて頭を撫でられたことで、何も返せず固まっていると、ノイルは気付いたようにサッと手を引っ込めて謝る。

「悪いな、他国に嫁いだ妹がいるんだが、あいつに接する感覚でやってしまった。…兄上達に内緒にしてくれると助かる。」

確かにいきなりで驚きはしたが、なんだか大きな手で優しく撫でられると安心する。だから不快に思ったりはしていない。そう言えば優しく微笑んで、ありがとう、と言われた。

「…っと、そろそろ時間だな。クレア嬢…敬称無しでもいいか?勉強の時間だぞ。」

敬称はもちろん、ノイルの方が立場は上なのだから頷くと、勉強の時間だと言う。だが辺りを見渡しても、まだ講師は来ていないように思うが…。

「エイリー達に聞いた通り、表情で読みやすいな。…俺が君の講師だ、こう見えても魔法の分野は得意なもんでね。」

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