浅く広く、でも確かに2
「初めまして、私マリーナ・キャンゼルと申しますわ。アーデスト王国の公爵を賜っているウリト・キャンゼルの娘ですの。よろしくしてくださいましね?」
マリーナは綺麗な金髪を少しロールにして、優雅に扇を広げている。顔は猫目でありながらも、どこか優しい雰囲気がある可愛らしい感じ。如何にも貴族令嬢らしい感じなのに、高飛車や我儘な感じはせず、礼儀正しい人だった。
「私の友人も紹介してもよろしいかしら?…レゼット、挨拶を。」
そう言われて目の前に現れたのは、前髪で目元を隠している令嬢。もじもじとしながら、挨拶をしてくれる。
「は、初めまして…私、レゼット・エナメスと申しましゅ!…あっ…申し…ます。エナメス伯爵家の娘…です。」
言葉に詰まり、噛みながらもどうにか挨拶を終えたレゼットは、すぐにマリーナの後ろへ隠れてしまった。
挨拶の際に見た容姿は、マリーナに似て可愛らしい感じだった。綺麗な赤髪を下ろしていたことくらいしか確認できなかったが。
「申し遅れました、アルカート王国カレンティス公爵が娘、クレア・カレンティスと申します。…お二人は仲が良いのですね。」
微笑んで挨拶を返せば、マリーナは嬉しそうに頷く。
「ええ!レゼットとは三歳の頃から一緒ですの!人見知りなのですが、好きなことになると目をキラキラ輝かせて、それが可愛らしくて!」
興奮気味に話すマリーナの後ろで、恥ずかしさからか更に小さくなるレゼットが見える。でも後ろに隠れているレゼットが、マリーナのドレスを摘んでいるのをみると、レゼットもマリーナを信頼しているのが窺える。
「っと、興奮してしまいましたわ。仲が良い、と言ってくれる方が今までいなくて…喜びのあまり、語ってしまいました。」
失礼いたしました、と優雅に腰を曲げ謝罪を述べる。それに倣ってレゼットも腰を曲げた。
「ふふっ、謝罪など必要ございません。お二人の仲良しなお話を伺えて、私も楽しくなりましたので。」
マリーナは心からレゼットの事が好きなのが分かるし、レゼットも同じような気持ちなのが分かる。今まで仲良し、と言われてこなかったのは、家格の違いを妬んだ者達だと思う。そこに私が言ったのだから、嬉しくて話たくなるだろう。何とも可愛らしい二人だな、と思っているとマリーナが姿勢を正した。
「温かいお言葉感謝いたしますわ。…あの、こんなことを言って良いのか、迷いますけれど…。」
何か粗相でもしてしまったのだろうか、と自分の行いを振り返る。が、特段何かをしてしまったような心当たりはない。強いて言うならば、挨拶を先にすれば良かったか、と思う程度。だがここはアルカートではなく、アーデスト。国での作法の違いがあるのかもしれない、と前にも思ったことを思い出していた。
そんな私を見て、マリーナが意を決したように話す。
「クレア様、ぜひお友達になりませんこと?」




