見落としがちな日を5
お茶会の会場は王宮の庭園の一角。案内の際に教えてもらったが、この庭園の配置等は妃殿下が主体となって決められたそうで、どこを見ても美しい。そよ風に揺れる花を横目に見ながら歩いていくと、会場より少し距離がある所で妃殿下が立っていた。私が見えたのか、そっと手招きをしてきた。
「妃殿下、如何されましたでしょうか。…もしかして遅刻をしてしまったでしょうか…。」
申し訳ありません、と謝罪をする前に妃殿下が否定した。
「違うわ。時間は大丈夫だけれど…お茶会のルールは分かっているわね?」
ルール…とは一体どれを指しているのだろうか。席の位置のことだろうか、それとも手土産のことだろうか。一応エイリー達にクッキーを用意はしてもらったが…。
「おそらく貴女が思い浮かべているルールではないわ。入場の順番のことよ。」
失念していた、お茶会の経験も乏しく気にしていなかった。社交会や夜会、正式なお茶会の際の入場には順番がある。爵位の低い者から順に入り、高位の者を待たなければならない。もちろんただ待つだけでなく、自分より家格の上の者と話す機会でもあるからメリットはある。
余計なことに思考を持っていかれたが、今はそれどころではない。他国でも自国の家格は適応される、つまり公爵家の私は妃殿下より前に入っていなくてはいけない。妃殿下がここで待っていられたということは、私以外の招待客は既に会場にいるということ…。
「妃殿下、申し訳ありません!先に入って待っていなければいけない立場なのに…。」
そう言って頭を下げようとした私の肩にそっと手を置く。
「違うの、時間も順番も大丈夫よ、安心して。私がここで待っていたから、不安にさせてしまったわね。」
朝の時に伝えておけば良かったわ、と言う妃殿下の考えが分からず見つめる。
「本来ならば貴女は公爵家の人間。でも同時に他国から来ている賓客に値する。だからクレア、貴女は私と共に入場なさい。」
思わぬ事に少し考えてしまう。いくら賓客に値する、と妃殿下が思われようと、他の方からすれば誤解を受けてしまうのではないかと。妃殿下と共に入場出来るのは、この場合なら王女か、もしくは王太子妃。王太子妃の婚約者もあり得る。妃殿下の子はユリウス、ただ一人。そうなると私が婚約者に、と要らぬ誤解を与えてしまう。
私の考えを読むように、妃殿下が答える。
「心配はいらないわ、私からちゃんと説明をするもの。貴女の属性は我が国でも一人いるかいないかの希少さ。年齢も合わせれば、王家として庇護をしている、とね。」
まぁ、今日いる子達は心配いらないでしょうけど、とも言って。
妃殿下がそう言うのならば従うほかない。お願いいたします、と告げ妃殿下と会場へ向かった。




