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闇の令嬢、愛を思い出す  作者: 雨音祭
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見落としがちな日を3

挨拶をするために席から立ち上がろうとすると、国王が手で制する。

「お早う、カレンティス嬢。朝から堅苦しいのはやめてくれ、君も落ち着いて食べられないだろう?」

堅苦しいのは公式の場だけで良い、とも付け加えて言われる。確かに毎日、毎回挨拶するのも如何なものかとは思うが、敬意をはらえないと思われるかもしれないと悩んでもいた。だから陛下の言葉は有難いもの。

「お早うございます陛下、妃殿下。温かいお言葉、感謝いたします。」

席に座りながら二人の方へ向き、挨拶とともに感謝を伝える。二人は何故か驚いたような、困惑したような表情を浮かべていた。何かおかしなところがあったかしら、と思っていると妃殿下が話しかけてくる。

「カレンティス嬢…いえ、クレアと呼ばせてもらうわね。…もう少し肩の力を抜きなさい?」

妃殿下から名前で呼ばれ、驚きと喜びが心に浮かぶ中で肩の力を抜けと言われる。緊張しているのは分かるが気楽に接して大丈夫、と言われていることは理解できる。先程の陛下の言葉だってそうだ。でも気楽に接する、とはどうしたら良いものなのかが分からない。エイリー達との接し方と違う、ユリウスとの接し方とも違う。どの位まで気を緩めて、どの位は不敬に値するのかが分からない。父や母に対するような感じだろうか、でもそれも今とさして変わらない気がする。多くの人と会話をしてこなかったが故に、簡単に言われても難しい。

悩んでいる私を見て、苦笑を浮かべながら言われる。

「クレアには勉強よりも、人との関わりを教えたいわね。」

それは是非とも教えていただきたい。私はそれも知りたくてここに来たのだから。

妃殿下にお願いします、と伝えようとした瞬間に陛下が声をかける。

「彼女はまだ来たばかりだ、その辺りはこれから覚えていけばいいさ。それより朝食をいただこうじゃないか。」

いつの間にか席に着いている陛下に促され、妃殿下も席に着き食事が始まる。目の前にある朝食は至って平凡なもの、というより王族が摂る朝食にしてはかなり質素だと思う。焼き立てのパンにサラダ、オムレツにソーセージ。カレンティス家でも同じような食事だったから不満はないし、むしろ慣れ親しんだメニューで安心する。でも何故なのだろうか、本で読んだ他国の食生活でも、王族は大概食べきれないほどの料理が朝から出てくると書いてあったが。

そんな私の疑問をさも当たり前のように、妃殿下が教えてくれる。

「王族にしては質素だな、って思ったかしら?確かに他国と比べたら質素だけれど、これが本来は当たり前のことなのよ。」

当たり前のこと…。それは一体何を指して言っているのか分からずにいると。

「食べもしない料理があって、でもそれには国民が必死に作ってくれた物が使われているの。それを捨ててしまうなんて、国と民を背負うものとして相応しくない、と考えるわ。」

それにね、と付け加える。

「どんなものにでも命はある。それを粗末に扱うなんて、到底許されることじゃない。だから当たり前のこと。」

どこかの国では食べる前に感謝を捧げる国があるという。至極当たり前のことなのに、忘れがちになるとても大切なことだと、妃殿下は言っている。話を聞いて一つ思い出した。

「お話を聞いて思い出したのですが、父も母も食事はいつも食べ切れるだけ、と言っておりました。理由を聞いたことはなかったのですが、妃殿下のお話を聞いて納得しました。」

気にもしていなかったが、父と母の教えがここで繋がるとは。何故か誇らしくなってしまう。そんな私を微笑みながら、妃殿下は見つめる。

「素敵なご両親を持っているのね。貴女のことをもっと知りたいわ。時間が出来たらゆっくり話しましょう?」

是非、と頷き食事を進める。どれも美味しくて、あっという間に朝食を終える。昨日の夕食は緊張が勝って、味が良く分からなかったが、今日は話も弾み楽しかった。

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