見落としがちな日を2
誰かがドアをノックする音が聞こえる。それと同時に私を呼ぶ声も。
まだ目覚めきっていない体をどうにか動かしながら、起き上がる。寝ぼけ眼を擦りながら時間を確認すれば。
「えっ。…もうこんな時間?」
寝過ごしたわけではないが、普段より起床時間が遅い。いつもなら誰か起こしに来る前には目覚めていて、少しの時間本を読んで待っているくらいなのに。こんなことは無かったから驚いていると、再びドアをノックされ声がかかる。
「クレア様…?まだお目覚めではありませんか?」
「っ!起きているわ!寝ぼけていて…入って大丈夫よ。」
慌てて声をかければ、ゆっくりとドアが開きエイリーとユニが入ってきた。二人の表情はどこか心配そうな色を浮かべている。いつもと違い起きるのが遅くて体調を心配しているのか、昨日の出来事を心配しているのか。どちらにせよ二人に朝から要らぬ心配をかけてしまったようだ。
「お早う、ごめんなさい、いつもより起きるのが遅かったみたい。」
「お早うございます、謝られなくて大丈夫ですよ。寧ろいつもちゃんと眠れているか、心配でしたから。」
そう言いながらも、やはりどこか心配そうな表情は消えない。確かに夜更けに一度目は覚めたが、その後は『夢』を見ることもなく、しっかり眠れた。だから不調ではないし、昨日のことだって今は気にしていない。
(…だからといって、そう言ってしまうと更に心配させてしまうわね)
二人が準備をしてくれているのを眺めながら、今日の予定を思い浮かべる。今から着替えたら朝食を摂り、そこから王宮内を案内してもらう。午後には妃殿下主催のお茶会に出席するよう言われているので、一度着替え参加、その後は夕食まで自由。
お茶会の話は昨日の夕食時に妃殿下直々に伝えられたもの。初めての他家、しかも国を統べる王達との食事は緊張したものの、比較的和やかに進んだ。他愛のない会話をしていた際に、妃殿下が思い出したように、…いや機会を窺っていたように思えたが、お茶会の話を持ち出してきた。妃殿下直々に誘われてしまえば、断るなど出来ない。本音は着いて翌日にお茶会、なんて気が進まないが、どうにか笑みを保ちつつ承諾した。
それをエイリー達に伝えると、まぁ!と喜びの声を上げ、すぐさまお茶会用のドレスを見繕い始めたのは、見ていて少し笑えてしまった。
そんなことを思い返していると、着替えも終わり支度が済んだ。食堂までは昨日案内してもらったものの、覚えられなくてエイリー達と共に向かう。道順さえ分かれば、後は一人で動いても大丈夫じゃないだろうか、と考えはするがここはアルカートや自分の家ではない。それにエイリー達は何かと理由をつけて、付いてきてくれそうな気がする。今までと違うけれど、エイリーやユニがいてくれるのは安心するから、それでも良いかなんて考えていれば、食堂へ辿り着いた。
ドアが開かれ中を見れば、まだ誰も来てはいない。ホッと安心して、席に着く。陛下も妃殿下も礼儀に拘るような人には見えないが、他国から来たばかりの人間が一番遅く現れるなんて考えられない。考え過ぎかもしれないが、やはり守るために礼儀やマナーはあるものだと思う。背筋を伸ばして佇まいを正していると、ドアが開き陛下と妃殿下が入ってきた。




