見落としがちな日を1
ハッと目が覚める。ゆっくりと寝ていたはずなのに、呼吸が乱れて息がし辛い。短い呼吸を繰り返して、どうにか整える。部屋の窓を見れば、まだ月が浮かんでいる夜更け。外は静けさが佇んで寝る前と何ら変わりはない。寝汗の気持ち悪さにベッドから降り、近くに置いてある水差しからコップに水を注ぎ、喉を潤す。それでもやはり不快感は拭えず、あまりよろしくはないものの、王城だから安心か、と思いバルコニーへ向かう。
夜風の少し冷気を帯びた感じが心地良い。夜風にあたりながら、寝てから目覚める前までを思い返す。
しばらく見なかった、忘れていた『夢』。ユリウスと出会ってから見なくなったはずなのに、ここに来て見てしまった。見なくなった理由は分からない、でも見てしまった理由は心当たりがある。
昼間のならず者達との戦闘の際に、ユリウスの怒りに触れてしまい、見てしまったあの瞳。これが本当にそうなのかは分からない。でもこれくらいしか覚えがない。あの時、ユリウスの瞳を見て『夢』がフラッシュバックした。ただひたすらに怖かった、あの後もユリウスを受け入れられない程に。ユリウスの優しさを拒否してしまったくらいに。
「…殿下に謝らなくては…。殿下だって、命を賭して戦われていたのに…。」
ちゃんと分かっている、ユリウスが私の身を案じていたことを。それなのに最前線に一人で出て行ったから、怒ったことも。冷静に考えれば分かる事ばかりだったのに、あの時は冷静になんてなれなかった。私の内にある恐怖は、ユリウスには全く関係ないものだったのに、それをぶつけてしまった罪悪感が心に残っている。でもまだユリウスに向き合える勇気はない。負のスパイラルに陥りそうになって、頭を振りユリウスのことは置いておこうと、今さっき見た『夢』を思い出す。
今日見たものは何故かいつもと違った。初めて見た光景で、おそらくはアルカートにいる際に見ていた前の出来事だと思う。牢屋に捕われてはいたけれど、まだ生きて『夢』は終わったから。それに違いはそこだけじゃなかった。前の『夢』は私自身が恐怖や絶望を感じていた。でも今回は違う、私じゃない誰かが感じた思いが分かった。誰かを強く思い、誰かを守ろうとする強い意志を。確かに怖い、と思う私がいたのに、私じゃない誰かの意志が混ざり合っていたような感覚。
「…これは一体なんなのかしら。まるで…。」
考えていると、不意に風の冷たさに体を震わせる。今の時期は春で温かいとはいえ、夜風は思った以上に冷たい。風邪を引いてはいけないと部屋へ戻る。ふと時間を確認すれば、目覚めてから一時間程過ぎていた。つまりは一時間の間、寝間着の上に何も着ずに冷たい夜風に晒していたのだ、体が冷えて当然だった。静かにベッドへ戻り、再び考えようとしたが睡魔に襲われて、そこで意識は消えた。




