目覚め始める欠片12
そんな風にしていて、どれくらい時間が経ったのだろうか。近付いてくる足音がする。酷く焦ったように、走る音がいくつか。その音のする方を見る元気もなく、ずっと蹲っていると。
「クレア!!大丈夫か!?」
声の主が近寄って、すぐ側で屈んで私の肩に触れる。ビクッとして、反射的に肩に添えられた手を払ってしまった。しまった、と思う。なんせ肩に手を添えてくれたのは、ユリウスなのだから。幾分か冷静にはなったからそう思えたが、それでもやはりまだ怖い。声や言葉、行動からしても心配してくれているのは伝わってくる。でも今はその優しさを素直に受け入れられないほどに、心が距離を取りたがって咄嗟に払ってしまった。
謝らなければ…と声を出そうとする前に、ユリウスが話し始めた。
「…すまない、さっきは感情的になり過ぎた。…君をここに置いていってしまったのも…。謝って済むことじゃないが…本当にすまなかった。」
俯いているからユリウスの表情を見ていないが、声音からすると後悔が滲んでいるのが分かる。それでも何も言えずにいると、ユリウスはそっと立ち上がって、誰かに何かを話して離れていった。入れ替わるように私のそばにきて、ギュッと抱きしめてくれたのは…。
「クレア様…!お怪我はされていませんか!?…私達が不甲斐ないばかりに…。」
「もう大丈夫ですよ!ならず者達も残らず捕まえましたから!クレア様のおかげで、皆元気にいます!」
エイリーとユニが温かい言葉をかけてくれる。そこで漸く私は顔を上げることが出来た。視界に入ってきたのは、目元を赤くして心配そうに見つめるエイリーと、同じく目元を赤くしながらも微笑んでくれるユニ。二人を見ると緊張やら恐怖が内混ぜになった感情が落ち着いて、声が出る。
「エイリー…ユニ…?ごめんなさい…私、二人に…嘘ついて…。」
そこまでどうにか言葉を紡いだものの、込み上げた涙でまた喋れなくなってしまう。エイリーが大丈夫です、と言いながら背中を優しくさすってくれる。ユニがハンカチを取り出して、目元を拭ってくれる。…なんて優しい二人なのだろうか、私が嘘を吐いて出たことを知っているだろうに。きっとユリウスに酷く叱責されただろうに。それでも私に優しくしてくれて。
「ごめんなさい…ありがとう…。」
他に言いたいことはあるのに、それだけしか言えなくて。でも二人は頷き、ご無事で何よりです、と言ってくれた。
二人のおかげでどうにか落ち着いたのを察したのか、エイリーが話す。
「殿下がクレア様が戻り次第、転移魔法でアーデストへ転移すると仰られていました。ならず者達を連行しながらは危険だと、判断したようです。」
転移魔法を使う…。転移魔法は光と闇のみが使える魔法であるが、精度を求められる魔法。それに加え、馬車なども全て転移させるとなれば、必要となる魔力量は尋常じゃない。
「大丈夫なの…?殿下は先程の戦いで、消耗をされているはずだわ…。」
そう心配する私にエイリーが答えてくれる。
「ご心配に及びません。それだけの魔力は温存していたそうです。また騎士の一部に、王国に手紙を飛ばしてもらったとのことですので、着いてすぐに安静に出来る状態にしてあるそうですので。」
やはり今ある魔力全てを使うのか、そしてその後の魔力回復の為の手回しをしているとは。
「では、急いで戻りましょう。…いつまでもこうしていたら、他の方の迷惑よね…。」
ユニに手を貸してもらい立ち上がって、二人と共に馬車まで戻った。




