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闇の令嬢、愛を思い出す  作者: 雨音祭
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目覚め始める欠片8

目的地までの道のりを確認して走り出す。ドレスの裾が邪魔だが、今は気にしている場合ではない。本当は転移魔法を使えばいいが、今の自分では精度が悪すぎて使い物にならない。故に姿を隠して走る。極力戦いに巻き込まれない道を選んではいるが、ここは戦場。増援のならず者が出てきたりもする。そこは周りに気付かれぬよう、威力を調整して無力化していく。それを繰り返し、漸く目的地に辿り着き見えたのは。

黒髪を靡かせながら、魔法と剣を駆使して戦うユリウスの姿。

(っ!殿下が一人で戦っている…!?この状況で!?)

いくらなんでも無茶だと思う。実戦経験も無い自分が、一人でここまで来ていることを棚に上げて思ってしまった。でもやはり無茶だ、いくらユリウスが強いと言えど体格差がある。十一歳のこれから成長していく体と、既に出来上がった大人では体力さも動く速さも違う。ユリウスは苦悶の表情を浮かべながら戦っているのが見える。やはりこれでは決着がついてしまう。

そこまで考えた瞬間、その後を思い浮かべると体中が震え出した。

想像した、いやしてしまった。どこか遠くにあるような、起こり得ないだろうと心の底で思っていたことを。まだ起こっていないことが幸いなのに、震える体が動こうとしない。ただユリウスが戦っているのを眺めるしか出来ない。

徐々にユリウスが押され始めるのが分かる。ならず者もユリウスの疲労を見て、たたみ掛ける機会を窺っていたのだろう、ここぞとばかりに魔法と剣を振り続ける。そうなってしまうと立場は逆転し、ユリウスが防御と回避しか出来なくなっている。油断している敵に奇襲をしかけるのは今しかない、ユリウスを助ける機会なのは頭では分かっているのに。

自分の考えの甘さが憎い。こうなるかもしれないことくらい予期出来たのに、後先考えずに動いて、自分ならいけると過信して。結局は何も出来ないまま、怖くなって動けずじまい。

自分の行いを悔いていれば、更にユリウスは劣勢になっていた。既に攻撃をいなすだけで精一杯なのが見て取れる。その瞬間、ならず者の剣がユリウスの頬を掠めた。ツゥーと一筋の血が流れる。それを見たならず者が勝利を確信したように話す。

「いくら腕が立とうとも、ガキじゃここまでだな!どう殺してやろうか、剣で一息にいくか、それとも…。」

そう言い笑うならず者の手に火の塊が生み出される。

「こいつで苦痛を味あわせながら、消し炭にするかぁ!!」

ユリウスがどうにか剣を構え直し、受け止めるつもりなのだろうか、キッと敵を見据える。火の勢いは段々と大きくなっていく。

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