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闇の令嬢、愛を思い出す  作者: 雨音祭
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目覚め始める欠片5

アルカートを出てから三日経った。今の所はならず者達と出くわすこともなく、順調に旅路を進んでいる。しかし馬車の中は変わらず静けさを保ったまま。今はユリウスを信じても良いものなのか、決めかねて話せずにいる。ユリウスもそれを察しているようで、必要な事柄以外は基本口にしない。エイリー達も話をあまりすることもなくいる。二人にまで気を使わせていることを心苦しく思いながらも、それに今は甘えている。

窓を覗けば、三日前と変わって良く晴れている。胸騒ぎは変わらずあるが、このまま何事もなければいいな、と思った矢先。

馬車が急停止をした。その後すぐに何かがぶつかり合う音が聞こえる。反動で座席から落ちそうになった私をユリウスが抱き止めた。

「大丈夫か!こんなに早く出くわすとは。…エイリー、ユニ。クレアを何としても守り抜け、絶対にだ。」

そう言うユリウスが馬車から出て行こうとする。突然の出来事に思考が追いつかない中、私はユリウスを呼び止める。

「殿下!何故、行かれようとされるのです!出くわした、というのはならず者達のことでしょう、危険です!」

ならず者達がただのはじき者の集まりならまだしも、相手には魔法に長けたものもいる。いくら剣術が出来て、光の魔法が使えようと十一歳の男の子では危険すぎる。ましてや王太子が出て行こうとするなど。だがそんな私の手を取って、ユリウスは言う。

「言っただろう、守り抜くと。それに…私がこの歳で既に王太子になっているのは、ちゃんと理由がある。ちゃんと戻ってくるから待っていてくれ。」

そう言って手を離せば、サッと馬車を降りて行ってしまう。敵の数も何も分からない中、行ってしまった。

呆然としてしまう中、金属がぶつかり合う音がさらに強くなる。それと同時に、ドンッと爆発するような音が聞こえた。エイリー達が私を庇うように抱きしめる。爆発の音もさらに大きくなり、馬車が揺れる。そこで呆然としていた意識が戻ってきた。

外の様子は分からない、優勢なのか劣勢なのか、負傷者がどれだけいるのか、ならず者の中に魔法の長けた者がいるのか。何より…ユリウスは無事なのか。

(…戦える力はあるのに…守られているしか出来ないの…?)

確かに実戦もなければ、闇魔法の危険もある。でもだからといって、その力を使わずに誰かが傷付いていくのを良しとしたくない。正直言って怖い、『夢』と同じくらいに。でも『夢』は死ぬことはない、でも今は違う。少しでも傷を負えば血が流れるし、命を亡くしてしまうことだってある。怖くないわけがない。でもその思いと同じだけ、誰にも傷付いてほしくないとも思う。心の中で葛藤をしていると、またしても馬車が大きく揺れる。それでも私を守ろうとするエイリーやユニの手が、酷く震えているのが分かった。…そうだ、二人だって怖いに決まっている。命が脅かされる恐怖に歳が上か下かなんて関係ない、なのにそれでも守ろうとしてくれている。

(…私、変わるって決めたじゃない…!)

揺れ動いていた思いが一つの答えに落ち着いた。

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