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闇の令嬢、愛を思い出す  作者: 雨音祭
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目覚め始める欠片3

「報告…か。予想は付くが分かった、聞こう。」

そう言うユリウスだが、護衛は中々話し始めない。私達をチラッと確認しているから、おそらくは私達には聞かせたくはない話なのだと分かった。ユリウスもそれを察したのか、護衛に言う。

「彼女にも聞いてもらった方が良い、と私は判断している。だからここで話してもらって構わない。」

「…了解しました。実はつい先日に行商人が国境に来たそうなのですが…道中でならず者達と出くわした、との報告が上がっております。」

渋々と言った様子で話し始めた彼の言葉にビクッとしてしまう。怖さからきたものじゃない、いや少しはあるだろうがもっと別の理由。落ち着いてきていた胸騒ぎが、またしても大きくなってきたから。

「被害はどれだけあった?また先日と言ったが、何日前だ。他にならず者の詳細も分かるなら知りたい。」

ユリウスは眼光をとても十一歳と思えぬ鋭さで護衛に問う。護衛はその視線に射抜かれ、少し体を強張らせながらも答える。

「二日前に襲撃にあったとのことです。人数はおよそ二十名程で、魔法に長けた者もいた、と。載せていた荷物の半分程を切り離して、馬車を全力で走らせ逃れてきたそうです。」

二日前…だとすればまだ近くに潜伏している可能性が高いはず。行商人が如何程の荷物を積んでいたかは分からないが、まだ残りの分もと考えていたとすれば、出くわす可能性は十分に高い。それに魔法に長けている者がいるのも気になる。ならず者達がはじき者達の集まりだとしても、魔法の扱いが上手な者は少ないはず。なぜなら庶民が使える魔法は生活魔法程度、魔力量が少なく、魔法の教本も値が高いために必要最低限しか使えないからである。その中に元貴族がいるのなら話は別だが、没落した貴族達の行動には制限がかけられるから、まずないことだと思う。頭の中で考え続けていれば、ユリウスが呟くのが聞こえる。

「…成る程、魔法を使える…か。厄介ではあるが、通らねばアーデストには行けないな。いざとなったらあれを…。」

思案したのちに思いは決まったようで、各馬車に強固な防御壁を纏わせるよう指示を出し、出発することを告げる。護衛は指示を伝えに戻っていった。馬車のドアが閉まれば、ユリウスは深く息を吐き、私を見つめる。

「すまない。聞かせたくはなかったが、聞いてもらう方が良いと勝手に判断した。」

申し訳なさそうな顔をしながら、理由も述べる。

「警戒をしてほしい、と言うのもあるがそれよりも…聞いた方がクレアの不安の形がはっきりすると思ったからだ。」

どうだろうか、と言われ頷く。あの話を聞いた時、胸騒ぎは大きくなるとともに何が気になっていたのか、漸くはっきりと分かった。私が気になっていた、いや恐れていたのはこれだ。勘、というには余りに異常な程のものが形を見せたことで、頭の中が鮮明になってきた。ユリウスを見つめ問う。

「殿下、失礼ながらお聞きしますが…。殿下はこうなることを予期していたのではなく、実際は知っておられましたね?」

そう問うとユリウスは一瞬だけ目を見開いたが、すぐに真剣な表情へ戻る。それを見ただけで分かる、やはりそうだったのかと。

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