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闇の令嬢、愛を思い出す  作者: 雨音祭
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目覚め始める欠片2

どうにか朝食も終え、国境へ向かう馬車の中にいる。朝話した通りに馬車の中には、ユリウスと私、エイリーとユニの四人が乗っている。四人が乗ってもまだ余裕があるくらい広いのに、馬車の中は不自然なほどに静かである。外から打ちつける雨の音だけが聞こえ、木霊しているように思えてくる。

窓の外をチラッと見ても、灰色の空がかろうじて見えるくらいで、あとは雨のせいでよく見えない。御者の席には魔法で結界が張られているらしく、雨でも馬車の操縦は出来るらしい。視界も便利なもので魔法で道標を作り、それを光らせることで認識して進むとのこと。だから余程のことがない限り昼前には国境を越え、問題の難所へと入っていく。国境を越えるまでの不安はない、だがその先は逆に不安しかない。ならず者が怖いからじゃなく、理解出来ない胸騒ぎのせいで。今までこんなことは無かった、初めて行く場所だって怖いなんて思ったことがない。家族のもとを離れた寂しさからくるものではないと思う。…一体、何が怖いのだろうか。自分に問いを投げ掛けても答えは返ってこない。母から譲り受けたネックレスに手を当て、どうにか気持ちを落ち着けていた。

「…クレア、心配しなくていい。何か起ころうとも守り抜くと約束しよう。」

そんな私を気遣って、ユリウスが温かい言葉をくれる。それだけで少しだけ、ざわめきが小さくなる。だが何故か、その言葉にさえ引っ掛かりを覚えてしまった。普通に聞いていれば、なんてことのない優しさから出てくる言葉に。

(…きっと普段と違う状況だから、気になってしまうのね)

そう思い、深く考えるのをやめてユリウスへ微笑みかけ、ありがとうございますと告げる。その言葉を区切りのように、またしても馬車の中には静寂が訪れる。少しだけ落ち着きを取り戻したおかげか、車内の皆の行動を見る余裕が出てきた。ユリウスはいつものように座って揺られているが、いつもと違って話しかけてくることはせず、まるで何かを警戒している様に見える。普段ならちょっとした公務をしていたりもするのに、それには手をつけず、しきりに窓の外を気にしている。エイリーやユニは私の方を何度も確認しながら、体調を気遣ってくれている。それぞれが不安や思いを抱きながら過ごしている馬車を見ると、馬車が緩やかに速度を落とし止まる。

どうしたのだろうか、と窓を見れば国境を意味する壁が目に入る。いつの間にか太陽も高く昇り、国境まで来ていたようだ。止まったのは国を行き来するために発行されている証明書を、国境を守る警備に見せるためだろう。それであればアーデスト王国の紋章の馬車や証明書を見せれば、馬車内の検閲等も無いからすぐに進み始めるだろう、と考えていると。

私達の乗る馬車のドアをノックし、ユリウスを呼ぶ声が聞こえる。それをエイリーが素早く対処し、ドアを開ければそこには護衛の者がいた。護衛は一礼したのち、ユリウスへ報告があると告げる。

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