目覚め始める欠片1
昨日のあの楽しかったひと時が、夢の様に思えた朝。
いつも通りにエイリーとユニに準備を手伝ってもらいながらも、何故か胸のざわめきが気になって仕方ない。これからの道の険しさに対する緊張ではない、ユリウスやエイリー達と楽しいお茶会を過ごした余韻でもない。ここまで清々しいほどに晴れていた空が、打ちつけるほどの雨に変わった。まるで楽しい時間はここまでだと言わんばかりに。もちろん、ただの胸騒ぎ程度であるなら心配はないだろう。だがここである国の言葉をふと思い出す。『嵐の前の静けさ』…昨日までがそれに当たるとするならば、これからの道が危険なのではないか。自分でも理解の出来ない、無視することの出来ない胸騒ぎが気になってどうしようもない。
「…クレア様?昨夜は眠れませんでしたか?顔色があまりよろしくない様ですが…。」
不安を隠すのは上手だと思っていたが、エイリーに心配されるほどに顔に出ていたらしい。エイリーが鋭いのか、昨日言われた様に私は表情に出やすいのか、どちらにせよ不安は伝わっているのは分かる。なんと答えたら良いものかと一瞬悩み、初めてアルカートから出るから不安なのだ、と答えておいた。
エイリーもユニも、今日からは同じ馬車に乗り合わせますので安心してください、と言ってくれる。とりあえず微笑んで頷いたが、心は晴れない。言えない、言葉に表しようのない不安がずっと居場所を取っているから。
きっとこれを二人に言っても、同じように励ます言葉をくれるだろう。でもそれで解決できるようなものじゃない。
そんな思いを抱えながら、ユリウス達のもとへと向かった。




