表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇の令嬢、愛を思い出す  作者: 雨音祭
52/165

心安らぐ時を3

来訪者の正体はユリウスであった。ノックされたドアに近づき確認したエイリーも驚いていた。確かに急に王太子殿下が一人で現れたら驚くのも無理はない。ユニも慌てて立ち上がり、ユリウスのために準備をしようとすると。

「ああ、気にせず座って会話をしていてくれ、エイリーも。楽しそうな声が聞こえて来てみただけだ。仲が良さそうで安心した。」

そう言い立ち去ろうとするユリウスに、私は失礼かもしれないけれど、と提案をする。

「あ、あの殿下!お時間があればで良いのですが…お茶会に参加されませんか?無理にとは言いませんが…。」

徐々に声が小さくなってしまう。おそらくユリウスは休憩中に心配で訪ねてくれたのだろう。移動中の馬車の中でも、宿に着いてからも公務の処理をしているのを知っている。私を一緒に連れて行くために滞在を長引かせたのだ、公務が溜まっているに違いない。だから戻ればまたすぐに公務に取り掛かるだろう。だが果たしてそれは休憩なのだろうか、特に明日からは体力も精神的にも疲れる旅が続く。少しでも息抜きをしてほしい。

「 誘いは嬉しいが…邪魔にはならないだろうか?三人だから話せることもあるだろう?」

そう問いかける。私としては全くそんなことはないが、エイリーとユニはどうだろうかと見遣れば、二人は微笑んで大丈夫ですよ、と声に出さず言ってくれる。二人からの許可も得たので返事をする。

「邪魔になどなりません。むしろお話をしたかったので…いかがでしょうか?」

ユリウスは一瞬の逡巡をしたのち、参加させてもらおうと言ってくれた。エイリーとユニが椅子とお茶を用意して離れようとすれば。

「何をしている、二人も座ると良い。私は三人の茶会に誘われたんだ、気にしなくて良い。…給仕などもしなくて良いからな?」

ユリウスは言外に、この時間は立場を気にせず楽しめ、と言っている。本来なら主と侍女が席を共にすることはない。それが王太子となれば尚更に。でもユリウスは、三人の茶会に誘われた、と言ったのだ。それを当たり前のように言えてしまうユリウスの優しさに感謝をする。実際に私も二人をどうやってこのまま居てもらおうか、と考えていたから。その言葉を聞いたエイリーとユニは困惑しながらも座ってくれた。ユリウスに感謝を述べようと思ったが、やめた。これは後で二人の時に言うべきだと思ったから。多分ここで言ってしまえば、ユリウスは当たり前のこと、と返してくれるだろうが、エイリーとユニは更に居心地悪くなって遠慮してしまう気がする。あとで二人になるタイミングがあれば伝えよう、と思っているとユリウスが問いかけてくる。

「さて、皆は何の話をしていたんだ?混ざっても問題ないものなら加わりたいが。」

何の話をしていたと言われても自己紹介をしていたとしか言いようがない。ユリウスに関しては自己紹介をせずとも、ここにいる三人は知っているのだから混ざりようがない気がするのだが…、と考えているとユニが発言する。

「クレア様の可愛らしさを話しておりました!」

そう言った瞬間に何故かウッ、と脇腹を押さえている。押さえている側に座っているのはエイリー…ということは彼女が何かしたのは分かった。ユニは涙目になりながらエイリーに謝っていた、上下関係がはっきりしている。…そんなことは置いておいて、ユニが言ったことは事実じゃない、確かに言われはしたがあくまで話の流れで、というだけ。殿下なら適当に流されるでしょう、と自己紹介をしていたことを伝えようとする。が、遮られてしまう。

「ほう…。クレアが可愛らしい話か。…その話は私も興味があるな。エイリーやユニが思う可愛らしいところを聞かせてくれ。」

まさか興味を持たれると思ってもいなかった。まだ猫や犬などのペットの可愛さを、ならば分かる。だが話題に上がっているのは私である。可愛らしいなんて家族以外に言われたこともない、その言葉に程遠いはずの私。恥ずかしいを軽く越えてしまい、頭の中は真っ白になってしまう。

「先程話していたのは、クレア様は気持ちが表情に出やすいっていう話でしたけど。それだけじゃなく朝のお手伝いに向かうとですね、たまに寝癖が付いている時が…。」

ユニがそこまで言うと、またしても脇腹を押さえ涙目になる。どうやらさっきより強かったのか、言葉を発せられずいるようで申し訳ないが、エイリーを褒めてしまいたくなる。流石にまだ十歳といえど淑女のプライドは持ち合わせているつもりだ。友人といえど殿方に聞かしたくないものである。それを察してくれたエイリーに心の中で感謝をする。

ユリウスも少し気まずいのか、軽く咳払いをして話題を変えた。そうして束の間の休息は穏やかに過ぎていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ