心安らぐ時を2
話が弾んでいるのをずっと見ていたユニが声を上げた。
「エイリーさんばかりずるいです!クレア様、すでにご存知だと思いますが私はユニ・リーケルと申します!リーケル男爵家の次女で十六歳です!得意属性は見た目通り火属性ですので、寒い日や火を起こしたい時に役立ちます!趣味は体を動かすことですので、どうぞ存分にお使いください!」
名前はもちろん知っているが、男爵家の次女だったとは。あまり…こう私の知っている令嬢にはいないタイプだったから驚く。歳はエイリーの一つ下だけど家格は上、なのにちゃんとエイリーを先輩として慕っているのはすごいと思う。元々の彼女の性格なのかもしれないが、大抵同じように侍女になっている令嬢は、庶民に対して当たりが強いと聞く。元気一杯で差別意識もない、素敵な人を侍女にしてもらったなと思う。ただ魔法や趣味の利点がそれで良いのか、と問いたくはなってしまうが。
「よろしくねユニ。体を動かすのが趣味と言ったけれど、どんなことをしているのかしら?」
質問をすると、よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりの顔をする。顔に気持ちが出やすいのもはっきり分かった。なんというか、年下が思うことではないと思うが可愛らしい。そんなユニが胸を張って言う。
「護身術から剣術、馬術をやってます!」
なんとも予想を超えることを言われた。体を動かすといっても、ストレッチくらいだと思っていった。護身術は分かる、自分で身を守る手段はあるに越したことはないから。だが剣術と馬術は騎士を目指さない限り、貴族は基本しない。もちろんアルカートとアーデストの常識は違うだろうから、アーデストでは当たり前のことかもしれない。困惑から答えに漸く着地した辺りで、ユニが慌てた様子で話す。
「か、変わっているのは理解してます!ただ実家が騎士を多く輩出していまして…。物心ついた頃からやっていたもので…。」
変ですよね…、と落ち込んでしまった。予想と違って驚きは確かにしたが、それで軽蔑や嫌悪は一切ない。
「ごめんなさい、確かに驚いてしまったわ。でも変だとか嫌だ、なんて微塵も思っていないの。むしろ心強いと思っているくらいだもの!」
上辺の様な言葉になってしまったのが拭えない。本心から頼れる侍女だと思ったのだけれど、良い言葉が思い浮かばない。少し焦りながら言葉を考えているとふふっ、と笑い声が聞こえる。どうしたのだろう、と顔を上げればユニが嬉しそうに笑っている。
「失礼しました。クレア様大丈夫です、ちゃんと伝わりましたから!今まであまり良い顔をされない趣味でしたが、こんな風に言ってもらえたのは初めてで。嬉しくて、つい。」
そう言った後にあっ!、と何かを思い出したように続ける。
「ユリウス殿下にも認めていただけたおかげで、クレア様にお仕えすることが決まったんです!趣味のおかげで素敵な方にお仕えできるなんて、私は幸せ者ですね!」
そう言う彼女はさっきと変わって楽しそうで。きっと今まで至るところで非難され続けていたのだろうに、たったこれだけで幸せだと言ってくれるなんて。何故かこちらまで嬉しくなってしまう。思いが顔に出ていたのだろう、エイリーが微笑んで言う。
「クレア様は感情が豊かで本当に素敵です。平民出の私にもユニにも、当然のように接していただける優しさも。お会いしてまだ二週間ですが、お仕え出来ることが幸せだと私も思います。」
また嬉しいことを言ってくれる。横でユニも何度も頷くから、照れて頬を少し赤らめる。この一ヶ月程で照れてしまうことが多いな、と思っていればユニが私を見る。
「クレア様って普段は凛とされている感じありますけど、結構表情に気持ちが出ていて可愛らしいです!」
何故更に照れてしまうようなことを言うのだろうか、なんて思っていればドアがノックされる。




