心安らぐ時を1
あれから幾日も過ぎ、明日いよいよアルカートの国境を越える。今日はそのために昼前に宿へ着き、今は割り当てられた部屋でエイリーとユニとともに体を休めている。簡素な木のテーブルに並べられているのは、三人分の紅茶とクッキーなどの手軽に摘めるお菓子。そんなテーブルを囲むように三人で座っている。何故こんな状況になっているかというと、私が女子会をしたい、と二人に言ったからである。実際は女子会というより自己紹介の場、と言った方が正しいかもしれない。今日まで朝や夜に私の身支度等をしてもらっていたが、中々ゆっくりと話す時間が無くここまで来てしまった。折角ゆっくり出来るのなら、と思い付き二人に伝えた。初めはやはり難色を示していたが、二人をもっと知りたいという私の思いに応えてくれた。
「改めまして、アルカート王国カレンティス家のクレアよ。歳は十歳で、得意とする属性は闇。趣味…というか習慣になっているけれど、本はジャンルを問わずに好き。」
発案者故に先陣を切ることにした、が正直何を言ったら良いのか分からない。あとやはり敬語抜きの話し方が慣れなくて話しづらい。いずれは慣れなくては、と思ってはいるが今はまだ難しい。それでもどうにか自己紹介らしいことは言えたと思う。
それに続いてエイリーが始める。
「それでは私もさせていただきますね。王太子殿下よりクレア様の侍女を任命されましたエイリーです。家名は平民の為ございません。十七歳で、得意属性は風です。趣味はお菓子作り…でしょうか。」
「エイリーは十七歳だったのね、だから居てくれると安心できたのね。お菓子は何が一番得意なのかしら?良ければその…食べてみたいわ。」
七つ上だと何故か安心感がある。少し歳の離れた姉、みたいな感覚になるのだろうか。初めて会った日の夜もエイリーが気づいてくれて、二人で話していると安らいで眠ることが出来たこともあるとは思うが。ただお菓子作りが趣味なのは気になる。私は好き嫌いなく食べるが、甘いものは好き。お菓子と本があれば一日を余裕で過ごせるくらいに。今テーブルに並べてあるお菓子の半分も私がこっそり持ってきたもの。それくらいに好きだからどんな物を作るのか気になる。エイリーは苦笑いを浮かべながら答える。
「本当に庶民的な物しか作れませんが…ドーナツやパンケーキはよく作っていましたね。よろしければアーデストに着いてからになりますが、精一杯作らせていただきます。」
お願いするわ、と楽しみができたと笑顔を浮かべ言えば、エイリーも微笑んでくれる。




