初めてを繰り返して7
あれから朝食も済ませ、再びユリウスと二人で馬車に乗っている。エイリーとユニは私達が乗っている馬車のすぐ後ろを走る馬車に乗っている。だから昨日部屋に着くまで会わなかったのか、と他事を考えていれば、ずっと何かを考えているようだったユリウスが話を振ってきた。
「クレア、昨日の話を覚えているだろうか?この街の男の数が少ない、という話だが。」
昨日の話と言われて、どれのことだろうかと思っていれば、街に入ってから感じていたことだったようだ。はい、と頷けば本来は君に話すことではないんだが、とユリウスが言う。
「昨日少し調べさせたんだが…どうやら出稼ぎだけではないようだ。…出稼ぎではないと言ってしまうと語弊があるが…。」
語弊がある…ということは出稼ぎではあるが、理由が他にあるのだろうか。行った先で事故や病気で帰れなくなっているのだろうか。もしくは…出稼ぎと称して何かに巻き込まれたのか。
考えれば可能性は尽きなくて、どれもしっくりこない。ユリウスの調査結果の続きを聞かねば、なんとも言えないなと続きを待つ。
「多くの人数が同時期に同じ場所へ行ったらしい。もちろんそれは何らおかしなことではない…向かった先に鉱山や農場はあるのなら、だがな。」
「それは…出かけた方々が嘘をついて出て行った、ということでしょうか?でも仕送りが無ければバレそうなものですが…。」
そう返せばユリウスは一枚の紙を私に手渡してきた。受け取り目を通すと、紙に書かれているのは表。数字とともに単位も書かれている。だがこれがどうしたのだろうか。表を見ても鉄や土の成分が書かれていることくらいしか見えてこないのだが…。
「それはこの街に残っている家族らに宛てられた手紙から取った成分を表したものだ。向かった先が鉱山や農場であるなら、少なからず付着するものがある。しかし…何人かに協力してもらい手紙に付着した成分を検出したが…あまりに綺麗だった。」
それに、とユリウスが続ける。
「この表で出したのは出稼ぎ先として多い場所の成分だ。だが表の一番下、これは…アルカートとアーデストを繋ぐ道で検出されるものだ。」
バッと紙から顔を上げ、ユリウスを見る。ユリウスが頷くのを見れば、これからの道に不安が出る。
ユリウスが言ったアルカートとアーデストを繋ぐ道、それは一週間半で通り抜けるといった道。ならず者が出没するといわれる場所に民がいる。それも拐われたわけでもなく、自らの意志で。もちろんそこに人手を必要とする産業等はなかったはず。とすれば、残った答えは一つ。
「…アルカートの民が、ならず者達と合流している…。でも、何のために?街の雰囲気からしても貧しいわけではなさそうでしたが…。」
理由が分からない、貧しくて強奪…許せることではないが理解は出来る。でも街は活気ついていた。裕福とは言わずとも、その日暮らしというわけでは無さそうだった。何故ならず者達と合流したのか、またならず者達が何故アルカートの民を連れているのか。考えれば考えるほど、理解できないことばかりで堂々巡りしてしまう。
「合流した理由まではすまないが分からなかった。ただ手紙に書かれている内容が穏やかなものから、少し不自然な内容が書かれることが増えてきたと聞いている。…それが一体何を意味しているかも今はまだ分からないが…。」
そこで言葉を区切ったユリウスが立ち上がり、私のそばへきて額辺りをほぐす様に触れる。唐突にされると驚きと、それを上回る恥ずかしさで固まってしまう。ユリウスはそんな私に微笑みかけてスッと戻る。鼓動が早って、未だ頭の中は額を触れられた事実を受け入れられていないが、緊張にも似た気持ちは落ち着いた。おそらく考えるあまりに、眉間に皺を寄せてしまっていたのだろう、ユリウスはそれを緩めてくれたのだ。
「いずれにせよ警戒と万一の対処は出来るが、アルカートの民が関わっているとすれば、私達が先んじて解決に乗り出すことではない。警戒をする程度で考え込まなくても大丈夫だ。」
街の実態と調査結果は後日陛下へ届ける手配もしてある、と付け加え、そこからは取り留めのない会話へ移った。




