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闇の令嬢、愛を思い出す  作者: 雨音祭
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初めてを繰り返して5

あれから二人に入浴と着替えを手伝ってもらった。軽く夕食も部屋で済ませ、日課になった日記も書き、あとは寝るだけ…なのだが。 目が冴えて寝付けない。今まで『夢』のせいで寝苦しいことはっても、寝れなかったことはない。枕が変わると寝れないことがあるというが、それなのだろうか。体は少し疲れているのに眠れないなんてことは初めてで、どうしたらいいものか悩んでしまう。こういう時はハーブティーが良いとほんに書いてあったことを思い出す。が如何せん、ここは家ではない。調理場へ行って勝手に作るわけにいかないし、何よりこういうことはエイリーやユニの仕事だと言われている。それは分かっているのだが、時間的に二人も寝ているだろうに起こすのが忍びない。仕方ない、と諦めて睡魔が来るまで待とうとし始めた頃、ドアをノックする音が聞こえた。

こんな時間に誰だろうか、と怪しんでいると声がかかる。

「遅くに申し訳ありません、クレア様。エイリーです。」

聞こえてきた声音も確かにエイリーのものだった。それで警戒を解き、ちょっと待って、と声をかけドアの鍵を外し開ける。ドアの前に立っていたのは、寝着にカーディガンを羽織ったエイリーであった。

「え…っと、エイリー?どうしたのかしら?」

既に眠っているだろうと思っていたエイリーが訪れたことに驚いた。もしかして物音に敏感で起こしてしまったのだろうか、それなら申し訳ないことをしてしまった、と思っていればエイリーが答えてくれた。

「クレア様の部屋から物音が聞こえまして、もしかして眠れなくて困っているのでは?と思い、夜更けに失礼ながら参ったのですが…。」

エイリーが訪れたのは起きてしまったからじゃなく、私を心配してのことだったのか。尚更悪いことをしてしまったと思う。エイリー達も初めて会う者に、その日のうちから仕えることになったのだ、疲れているだろうに。

「ごめんなさい、中々寝付けなくて…。ベッドに入って睡魔を待つことにするから…エイリーはちゃんと寝てちょうだい?」

こう言えば大丈夫だろうか。今日が初対面ではあるがエイリーが真面目なのは分かった、分かったからこそ私が起きていると言ってしまえば、彼女も同じように起きていてしまうだろう。それだけは避けたい、避けなきゃいけない。日中彼女達は私のために尽くしているのだから。せめて夜だけでもゆっくりしてほしい。

しかしエイリーはすんなりと受け入れることはせず、何かを思案しているようだった。それもすぐに終わり、私を見る。

「あの…失礼は承知ですがクレア様がご迷惑でなければ、お茶を一杯、一緒にお飲みいただけませんか?私も少し寝付きが悪いので、お付き合いいただければ嬉しいのですが。」

エイリーからの思わぬ、しかしとてもありがたい提案が出てきた。きっと彼女の寝付きが悪いのは嘘だろう、眠れない私がしたかったことを理解し、自分の我儘として言っただけ。でもそれが今はとても嬉しくて、すぐに頷く。

エイリーは準備をしにサッと動き、本来なら一緒にお茶を飲むのはご法度だけれど、二人だけの秘密として過ごす。他愛のない話をしていれば、次第に眠くなり始め、それを察知したエイリーが片付けをし、私をベッドに寝かしつけてくれた。

「エイ…リー、ありが…とう…。エイリーも…ちゃんと寝てね?」

そう言うのが精一杯だったが、眠る前に見たエイリーが微笑んでいるのを見て、安心して目を閉じる。

今まで嘘は嫌いだったけれど、優しい嘘は嫌いじゃなくなった変化を思いながら。

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