深愛 -アリアスside- 6
夫妻は敬意の礼をし、王からの言葉を待つ。
陛下はカレンティス夫妻を見やると声をかける。
「カレンティス公爵夫妻よ、顔を上げるが良い。急な呼び出しですまなかったな。」
姿勢を正し陛下からの労いの言葉にウェルトが返す。
「勿体ないお言葉、臣下としてありがたく頂戴いたします。」
ウェルトもアリアスも礼儀は崩さぬものの、出来ればすぐに本題に入ってほしい。事によっては身の振り方を考えねばならない。
そんな雰囲気を読み取ったのか、陛下がユリウスに話を振る。
「ユリウス殿下よ、こちらがクレア・カレンティスの両親である。公爵がウェルト、夫人がアリアスという。殿下からの申し出を教えてやってほしい。」
そう振られたユリウスはとても十一歳とは思えぬ覇気を纏い、夫妻に口を開く。
「急な申し出をしてしまい申し訳ありません。私はアーデスト王国王太子、ユリウス・アーデストと申します。クレア嬢との交流は…知っていると思いますので割愛させていただきます。」
本題に入りますが、とユリウスが告げると夫妻は気を張り巡らせる。
「クレア嬢に対しての申し出とは、彼女を我が国アーデストに留学させてみないか?という事です。」
夫妻は一瞬言葉の意味が分からなかった。あまりに予想外すぎて想像に全く無かった申し出だったからだ。そんな困惑を感じ取ったユリウスが続ける。
「クレア嬢は多岐にわたり活かせる知識をお持ちですね。しかしそれはあくまで国内ならば、と条件がつくものもあります。」
それはそうだ、国内で流通している書物や歴史、知識となるものは国で学んだから。家の書斎…図書館に近い蔵書数があるが、それを時間があれば読んで理解してしまうくらいなのだから。
「それでも確かに十分でしょう。だがクレア嬢は知識欲に果てが無いように思えます。だからこそアーデストに留学し、自国と他国の違いを学び活かせるのでは、と考えました。」
そう続けられて漸く理解する。ユリウスはクレアの見聞を広げるために、そしてクレアに対する偏見をクレアの中から覆すために。
ユリウスの瞳を見れば力強い、覚悟の灯った目をしていた。
「クレア嬢はまだ十歳。お二人からすれば側にいてほしいと思うでしょう。ですが今しか機会はないと思うのです。」
アルカートでは十五になると貴族と一部の平民はマナーや知識を得るため学園に入る。その前には茶会などで顔を広めたり、他家との繋がりを持つように頻繁に出る。確かに今より学ぶ時間はグッと減ることは明白だった。
だがそれでも懸念は消えない。ウェルトが懸念を問う。
「ユリウス殿下、不敬を承知で申しますが確かにクレアのことを思えば最良の方法ではあります。しかし、クレアも貴族の一員。将来を考えると婚約者の問題もある。」
クレアにとって幸せなことかは分からないが、それでも親として子の未来の幸せを願っていたい。クレアを理解してくれる相手を見極めるには時間がほしい。
そんな気持ちから出た言葉にユリウスは真摯に答えた。
「お二人の思いは理解しているつもりです。ですから留学に期間をあえて定めずにあるのです。クレア嬢が望むなら延長も帰国もすぐに叶えましょう。」
婚約者の選定もお手伝いします、と更に付け加えた。




