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闇の令嬢、愛を思い出す  作者: 雨音祭
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上手く言えなくても良いから2

あれこれ考えながらも着替えたのは、紺色に白のフリルが飾り付いたドレス。髪は長旅になるからと、変に飾り付けはせず後ろへ流すだけにした。髪は母に丁寧に梳いてもらい、艶々である。あとはアクセサリーを付ければ終わりなのだが、そういえばまだ選んでいなかった。

「お母様、ありがとうございます。あとはアクセサリーだけですね。どれが良いのでしょうか?」

そう問えば母から、それはもう決めてあるの、と言われる。選ぼうと立ち上がりかけていた私を座らせて、母が少し目を閉じて、と言った。後ろから箱らしきものを開ける音が聞こえる。母の持ち物から着けてくれるのだろうか。心躍らせながら待っていると、母のドレスの袖が頬に触れる。胸辺りに何かが当たる感触がして、着けられているのがネックレスだと知る。良し、と装着が出来た母の声が聞こえ、どんな形で色をしているのか見られるのが楽しみで仕方ない。

「待たせちゃったわね、目を開けて見てみて。」

そう言われて目を開き、鏡の自分を確認すれば。胸元に大きな黒い宝石が埋め込まれたネックレスが着いていた。デザインは華美ではないものの美しくて、なんとも言えない存在感があるものだった。確かに素敵で母が着けてくれたものだから嬉しいのだが…黒い宝石とは珍しい。基本的にこの国は黒いものは闇を連想させるから、とあまり売られていないし入ってこない。そんな物を母が持っていることが不思議だし、他国へ出発するという日に黒はどうなのかと思ってしまった。

だが母はそんな私の心中など察していたようで。

「クレア、これはね。私のお母様…貴女のおばあちゃんね、から嫁ぐ時に貰った物なの。代々受け継いでいる家宝よ。本当は貴女の結婚の時に渡そうと考えていたのだけれど…今が渡す時なんじゃないかって。」

その言葉を聞いて鏡をもう一度見る。母の家に続く家宝…。それだけで重さが増したような錯覚になる。でも家宝だから重さを感じるわけじゃないと思う。もっと先の未来に渡そうと思っていたのに、今渡さなければ機会がないかもしれないと思った母の心情で、だと思う。

(やっぱり…約束があっても、一時の別れだとしても…寂しいもの)

だが今泣いてしまうわけにはいかない、折角母が綺麗にメイクもしてくれたのだから。でも言葉だけじゃ思いを伝えるには足りない。考えた末、そっと立ち上がり母をギュッと抱きしめる。

「お母様、素敵な贈り物を…ありがとう。これを着けていればお母様が近くにいてくれる気がする。…大事にするね。」

思いを全て言葉には変えられなかった、でもちゃんと伝えられた気はする。独り善がりをする前に母に話していたような話し方で。本当にただ母の思いと愛を感じたままで。

母はそう言った私を同じようにギュッと抱きしめてくれる。母の温かさを何よりも感じた瞬間だった。

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