アルストロメリアを心に飾って5
家に着いたのは綺麗な夕日が映える頃。父に起こされ寝惚け眼を擦るサイサスは、寝ちゃってたのか…と寂しそうにしていた。あれだけはしゃいでいたら眠くなるわよね、なんて言って笑えば、次は絶対に寝ないから!と宣言をした。これはきっとサイサスなりの約束なのだろうな、と思い笑顔で頷いた。
それから着替えたり、夕食の時間になって家族と今日の思い出を語りながらいれば、時間はすぐに過ぎ去っていた。気付けばあとはもう寝るだけ、そんな時間になっていた。
「この二週間、一日の流れる時間が早かったわ…。今日なんて特に。…こんなに満ち足りているのが怖くなるくらい…。」
この思いはここ数日、ずっと心の片隅に居座っていたものだった。味気も色味も無い毎日は地獄だったが、あれから変わりすぎてしまった今も怖い。いつかこの幸せに慣れてしまって、当たり前になってしまったら?幸せが突然無くなってしまったら?なんて思いが駆け回る。考えるだけで殻に閉じこもりそうになる、だけど。今その心配をしてどうなるのか、もちろん与えられるものを当たり前だなんて思ってはいけない。でも未来を憂いて逃してしまうのも違う。今日まで過ごして分かったこともある。誰の愛も受け入れられなければ、どこまでも孤独だと。同じように愛を渡せなければ、孤独になることも。
分かったことを思い出せば少しだけ、不安がなくなったように感じた。全てがなくなったわけでは無いけれど。
ふと思いつき、日記を開き書き綴る。今までの日記は嬉しかった出来事がメインで書いていた。でもこのどうしようもない不安も書いておけば、大事なことは忘れずにいられるんじゃないだろうか。思い出と同じように見返した時に、手を差し伸べてくれるような気がする。
思いを全て書き綴り終えた頃、月明かりが差し込む窓を眺めれば、キラッと一筋の光が流れていくのが見えた。願う暇もなかったけれど、不思議と不安は無くなり、心地良い眠気に誘われた。




