アルストロメリアを心に飾って2
食堂へ着くまで表には出さぬように気を付けてはいたが、心の中はドキドキがおさまらなかった。家族はどんな反応をするのだろう、似合っていると褒めてくれるだろうか。きっと、いや確実に褒めるだろう、特に父とサイサスが。
そんな思いを秘めながら食堂へ入る。席には既に皆が揃って私を待っていた。これも仲直りをしてからの我が家のルールになった。朝と夜は家族揃って食べること、朝はその日の予定を伝え合い、夜は今日あった出来事をどんなことでも話し合う。もう二度とすれ違うことの無いようにと父が決めた。
「お早うございますお父様、お母様、サイサス。服を選んでいたら遅くなってしまいました。」
朝の挨拶を告げ自分の席へ着けばメイドが朝食を用意してくれる。焼きたてのパン、羊肉の腸詰め、スクランブルエッグ、それに瑞々しい野菜を使ったサラダ。公爵家にしては朝食は簡素な物ではあるが、父も母も食べ切れる分以上にあることを嫌う。先日母に何故?と問えば、勿体ないでしょう?と返ってきた。おそらく母は実家にいた頃のことを思い出すのだろう。貧乏な時期に飢えないように、と農作業もしていたらしいから作り手の気持ちが分かるのだと思う。母は本当に素敵な人であると再認識した。
家族揃っていただきます、と朝食を食べ始めれば父が話しかけてくる。
「クレア、今日の服は初めて見るな。色合いも普段と違って新鮮さもありながら、よく似合っている。流石は私とアリアスの愛娘だ、世界一と言っても過言ではないな。」
本来食事中に会話は褒められたことではないが、父と母が家族の会話は大事だと昔から行われている。だからそれはいいのだけれど。褒めてくれるのは物凄く嬉しい、褒めてくれるだろうなと思っていたとしても嬉しい。だが世界一は過言すぎはしないだろうか。横でサイサスも大きく頷き「本当に世界一綺麗だよ!」なんて父の意見に完全に同意してしまっている。
普通なら母が諌めるのだろうが、我が家はどうやら身内贔屓が強いのか、母ですら微笑んで自慢げに頷いている。
かくいう私も家族が褒められれば同じようにする気がする。…身内贔屓というより家族愛が強いのだと納得しておいた。
とりあえず世界一かどうかは置いておいて、ありがとうございます、と伝える。皆が満足そうに嬉しそうにするものだから、起きた時の憂鬱にも似た感情が吹き飛んだ。
和やかな雰囲気で食事を終え、父が今日の予定を伝えてきた。それは唐突でありながらも喜びが勝ることだった。
「さて今日の予定なんだが…ピクニックに行こうかと思う、家族皆でな。仕事は調整をしてあるから心配いらないし、夕刻までに帰宅できる距離だ。…どうだい、クレア?」
驚きながらも母やサイサスを見れば二人は既に知っていたようで、クレアが決めていいのよと母に言われた。だとすれば答えなら決まっている。
「行きたいです!家の中で出来ることも楽しいですが、普段出来ないことをしてみたいです!」
元気良く答える。それは無意識であったが自分の本心から出たものだから気にしない。返事を聞いた父は嬉しそうに、皆準備をしておいで、と伝え各々準備へ向かう。私も出かけるのなら帽子や日傘があった方がいいかしら?と考えながら歩いていれば、ふとやってみたいことが一つ浮かんだため早歩きで母の元へ向かった。




