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闇の令嬢、愛を思い出す  作者: 雨音祭
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変わりゆくもの、変わらないもの 5

楽しかった時間はあっという間に過ぎていき、今は自室で日記をしたためている最中。内容は言わずもがな今日の出来事を全て書き記し、思いも同時に書き綴っていた。

特に今日は嬉しいことが二つあった。細かなものを数えればキリはないが、大まかに二つ。

一つはユリウスと共にアーデストへ向かうことが決まったこと。

これは一番の喜びであると言って差し支えないと思う。

半ば諦めていたことが叶うのだから、嬉しくないはずがない。

二つ目は母と共にパンケーキを作ったこと。

記憶にある限りでは母と何かを一緒にやったことなど無かった。本を読んでくれたりはしたが、刺繍をしたりとかは私が塞ぎ込んでしまったのもあり出来なかった。それが今日は出来たことが嬉しい。それに明日から一緒に作れる時間があることも。

ちなみにパンケーキを夕食に出した時、ユリウスに会うくらいに緊張をした。なんせ初めての料理で見た目は少々不恰好になってしまったから。味は母と同じものを使い、分量も計ったから問題はないと思っていたが、それでも美味しくなかったらどうしよう、と不安は拭えなかった。皆が食べるまでは。

母と私で四枚ずつ焼いたから、皆に一枚ずつ渡ることになる。お皿に乗る綺麗な円形のものと不恰好なもの。傍から見てもどちらが作ったのかは一目瞭然なのだが、父とサイサスは見分けがつかないな、と褒めてくれた。食べるのが勿体ない、と言いながらも私が焼いたものを一口食べ、父はとても笑顔で美味しい、と言い、サイサスも美味しい!おかわりはない?と気に入ったようで、すでに食べ終えてしまっていた。

母も手放しに褒めてくれ、むず痒いような嬉しいような気持ちに包まれた。

こんな素敵なことがあった日なのだから、記憶にも記録にも残しておかなければ勿体ない。

「こんなにも満たされたの初めてかも…。私、ほんの少しは変われているのかしら…?何かを楽しみに待つなんてした事無かったわ…。」

実際は変わったというより普通に戻った、の方が正しいのだろう。でも私の中ではそれが正解、物心ついた時から容姿や闇の力の偏見に囚われてきた。家族はなんら変わらず接してくれていたが、家に仕える者や領民は違った。それに加えて「夢」で全てを諦めていたのだ、そんな私が明日を迎えるのが楽しみになっている。これを変わったと言わずして何と言うのだろうか。

物思いに耽そうになるが、時計を確認して日記を閉じベッドへ入る。

明日は起きて朝食を家族ととり、父を送り出すのだ。それから母とサイサスと読書や刺繍をして、お昼は母と料理をする。日持ちする物も作れれば夕食時に父にも出せる。そんな楽しい予定がたくさんあるのだ、夜更かしをして寝過ごすわけにはいかない。

目を閉じたらすぐに睡魔が襲ってくる。きっと今日の疲れも気付かぬうちにあったのだろう、逆らうことはせず身を委ねた。

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