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闇の令嬢、愛を思い出す  作者: 雨音祭
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変わりゆくもの、変わらないもの 4

母が必要なものを指示し、私がそれを探す。小麦粉、ベーキングパウダー、卵、砂糖、牛乳を調理台へ置き、かき混ぜるためのボウルやヘラは母が用意した。

本での知識はあるが調理は初めてだから、準備だけでもワクワクが止まらない。そんな私を母は優しく見つめ微笑む。

「本だけでは分からないものがあるわよね。調理する前のワクワクなんて、実際にやらないと分からないもの。私もそうだったわ。」

まだ準備の段階でこんな状態で大丈夫だろうか、と自分に問いかける。本でも何でも、初めて見て聞くものは心が躍る。だけど今日はそれ以上に動いている。理由はなんとなく分かってはいる、母と一緒に作るから。

現実に感慨深くなっていれば母から声がかかる。

「じゃあ作っていきましょうか。まずはボウルに小麦粉とベーキングパウダー、砂糖を入れて。まずはそれを混ぜてちょうだい。」

母の指示通りカチャカチャと混ぜる。横で母も同じようにつくりはじめる。それを見ながら、ただ粉を混ぜるだけだから水を入れないと生地にならないのでは?と思えば、母が見越したように答えてくれた。牛乳を後で入れるから水を入れてしまえば生地として成り立たなくなるらしい。本では牛乳じゃなく水を入れると書いていたから、実際との違いを知れたことが嬉しい。

粉をしっかりと混ぜ合わせ、今度は卵を割り入れ牛乳を注ぐ。そしてまた混ぜ合わせる。今度は粉がダマにならないように満遍なく、と言われる。

「お母様、ダマ?とは一体何なのでしょうか?」

初めて聞く用語に疑問が浮かび母へ問う。答えは端的に言えば粉の塊らしい。ダマが出来てしまうとうまく焼けず、食べた時に粉が残ったままなのだとか。なるほど、料理は難しいと思うが同時に楽しくもある。

生地を綺麗にかき混ぜ、一つの達成感を感じていると。

「クレア、やり切ったと思うにはまだ早いわ。これから焼く、という大事な作業があるの。火加減を見誤ってしまうと焦げちゃうから気を付けてね?」

母にはお見通しであった。母の言葉に頷き、フライパンに生地を流し入れる。形を整え待っていれば焼け始めてきたのか、辺りに甘い匂いが漂い始めた。火加減を見ながらそれをずっと眺める。待つだけだと匂いに敏感になるのか、甘い香りでお腹が空いてきた。母がひっくり返して、と言ったことで意識をパンケーキに戻しどうにかひっくり返した。

そこから先程と同様に待ち、焼けたパンケーキを皿に移しついに完成した。

母が焼いたものと自分が焼いたもの、どちらも同じものを使っているはずなのに母が作ったものの方が美味しそうに見える。

「お母様の方が形も綺麗で美味しそう…。」

ちょっと悔しさから呟けば母が頭を撫でて慰めてくれる。

「ふふっ。初めてはそういうものよ、でもクレア?クレアが作ったものだって私からしたらとても美味しそうだわ。」

その言葉はとても嬉しい。嬉しいが、やっぱり悔しいものは悔しい。そんな気持ちが伝わったのか、母からまたしても提案される。

「そうね…じゃあこれから、貴女が出発するまで一緒に料理しましょう?朝でもお昼でも作れる時に。私が教えられることは全部教えてあげる。どうかしら?」

その提案に間髪入れず何度も頷く。上手になりたいのはもちろん、母と共に何か出来るのが楽しかったからそれが出来るのならやりたい。きっとそれも思い出になって、私を支えてくれる気がする。

私の喜び様に母も嬉しかったようで二人して笑った。

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