変わりゆくもの、変わらないもの 3
主要なことは話し終えたかな、と時刻を確認すれば夕食の時間に近づいていた。私の視線を追っていたのか、母からある提案が出た。
「ねぇクレア?ちょっと私の我儘があるのだけれど…聞いてくれるかしら?」
母の我儘なんて今まであっただろうか、記憶にある限り無かったなと思いながらも頷く。
「私これでも実家にいる時は貧乏な時もあって、料理をしていたの。その時から娘が生まれたら一緒に料理してみたかったのよ。…クレアさえ良ければしてみないかしら?」
料理…そういえば今まで一度もしたことが無かったな、と思う。公爵家だから料理は料理人に任せていたから当然の話なのだが。本で読んではいたからどんな料理があって、調理法がどうとかは知っている。ただ知っているだけであって実践はないから是非ともやってみたい。
母に了承を伝えれば楽しそうに微笑む。二週間しかないのだ、折角ならしたことのない事をやりたいし、思い出は作っておきたい。自分の中で何か忘れてしまいそうな時に、大切なものを思い出させてくれるようなものを。それに思い出は場所を取らないから沢山あって困るものじゃない。
母に微笑んで何を作るか問えば、簡単なものから作っていきましょう?と秘密にされてしまう。それを聞いていた父とサイサスは「二人の手料理か!楽しみだな!」なんて浮かれ始めていた。失敗しても知らない。
父とサイサスに退出を告げ、母に並んで調理場へ向かう。母はスキップしそうな位楽しそうな雰囲気を出している。そんな母と話していれば、直ぐに調理場へたどり着いた。
入るのと同時にいつの間に用意していたのか、侍女にエプロンを付けられる。
「ドレスを汚すわけにはいかないでしょう?本当は着替えられたら良かったのだけれど…待たせ過ぎても良くないから妥協ね。」
母の言葉に軽く頷き、手を洗う。洗い終わり手を拭いていると私達に気付いた料理人が声を掛けてきた。
「奥様、お嬢様如何されたのですか?夕食はあと少しで完成しますが…。」
料理人の疑問は当然だろう。なんせ普段から近寄るような場所ではないのにエプロンを着て、今から作りますと言わんばかりの格好なのだから。そんな疑問に母は優しく答える。
「いつもありがとう、今日の夕食も楽しみにしているわ。ただ今日は一品、私とクレアで作りたいと思って来たの。母娘の時間としてね。邪魔にならない場所を借りても大丈夫かしら?」
そう問いかければ、料理人は何度も頷き場所を貸してくれた。何か手伝いましょうか?とも言われたがそれは母が断る。
「さて、今から簡単に作れるものだと…そうね、パンケーキ辺りならいけるかしら。本当なら色々手順を踏みたいけれど時間も少ないし、手軽に作りましょう。」




