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闇の令嬢、愛を思い出す  作者: 雨音祭
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庶幾 -ユリウスside- 1

クレアとの茶会を終え送り出したあと。

一人ソファへ腰掛け、つい先程まで居たクレアのことを思い返していた。

今日の彼女は今までと比べられない程に凛々しさを持ち、揺るぎのない瞳を宿していた。クレアに装いを褒める際うっかり色々言ってしまったが全て本音。どこを取っても綺麗で素敵な令嬢だった。いや綺麗で素敵なのは出会った時から変わってはいないか。

溜息を吐き一旦容姿の事は忘れることにし、室内に防音と認識阻害の魔法を張り巡らせる。

「クレアがアーデストに来てくれるとはな。予想はしていたが…これが良い方へ向かってくれたら良いんだがな…。なぁ、ライネスト?」

部屋には誰にも居ないはずなのに名を呼ぶ。それに呼応するようにユリウスのピアスが光り始めた。

光はピアスから離れていき、向かいのソファで形を作り上げた。自分と酷似した姿、違うのは髪色が金髪なことだろうか、その姿になり、薄らと光を纏った男――ライネストが返す。

『そうなるかはユリウス次第だな。俺としてはシオンの考えに手を貸しているだけだ。…シオンが報われるようにな。』

そう言われ面倒だな…と思ってしまう。全てがライネストとシオンに仕組まれているようで気に食わない、がクレアの現状を考えればこうする他無かった。

「俺には貴方達の問題には関与したくない。ただクレアを思った結果が重なっただけだ。…彼女を巻き込みたくない。」

ライネストは眉尻を下げ、さも困ったと言わんばかりの顔をする。

『それは保証は出来んな。事の始まりはアルカートにある。それが正す事の出来る機会だ、逃す手立ては無い。…まぁ安心しろ、お前達にだけ押し付けることはしない。その為にこうして俺はいる。』

なんて勝手な人間だろうか。無関係とは言えないが事情を知らないクレアを巻き込むなど。自分の妻――シオンの死に関わることだからと、自分からしたらとばっちり以外の何物でもない。ただ…もし自分がライネストの立場で、クレアに何かあった場合には同じようにしてしまうのだろうな、とも思う。

クレアとはまだ茶会仲間程度の仲しかないが、自分にとっては何よりも大切な存在になっているから。

「…クレアには事情をちゃんと話した上でどうするのか、どうしたいのかは確認してくれ。貴方にとってのシオンのように、私にとって…代え難い存在なんだ。雑に扱うのであれば俺とて容赦はしない。」

『分かっているさ。ただ問題は…あの子がシオンに会っていないことだな。話を聞いていた限りだとシオンの影響は受けているようだが…。』

シオンと会っていない…という事は媒体とする何かを見つけていないのか。媒体が無ければ会うことは出来ず、ライネストの存在も感知出来ない。そうなるとクレアに説明が無いまま巻き込む形になってしまう。

どうしたものか、と顎に手をやり考えていれば、ふと思い付く。

「貴方は先程クレアが影響下にいると話していたな?その影響とやらが何なのかは分からないが…それをきっかけに居場所を伝えられはしないのか?」

茶会でクレアは独りよがりをしていた、と言っていた。それがおそらくはライネストの言う影響なんだろう。どんな風にクレアに影響を及ぼしているが分からないが、シオンの魔力が干渉しているのは間違いない。ならばそれで在処を伝えれば済むはず。

『それは無理だな。影響がある以上近くにあるのは間違いない。だがシオンの魔力の干渉は、特定の者に気付きを与えるだけに限定されている。いや、限定したと言った方が正確か?』

限定した…?どういうことだと尋ねれば答えが返ってくる。

『シオン自身が本当は他人を巻き込みたくない、という事だ。あくまで影響を受けた者が違和感を抱き、真相を見つけようとするのならば探して正して欲しいと、願うが故にな。』

シオンは心優しかったからな、と付け加える。

なるほど、シオンはライネストと違い強要を好まない人物だったようで安心した。自分は自分、他人には他人の人生があると理解し、それでももし真相を探してくれるのならば、と干渉をするようにしたのか。

だが結局これでは媒体の在処は分からずじまいだ。媒体が見つからなければ、ライネストとシオンが望む願いが強制に変わりクレアを苦しめるだろう。

「…何か他に手はないのか。」

投げやり気味に放つ言葉にライネストは笑う。

『流石のお前でも思いつかないか。まぁ他家の、しかも隣国の事だからな、迂闊に動けはしないか。今回のこともあるしな。』

ライネストの言う通り、アーデストに留学することになるとはいえ、そこまで踏み込む権限は無い。第一クレアすらも気付いてないのであれば、家族が分かるはずもない。まさに行き詰まりだ。

そんな中ライネストは真剣な顔でこう告げる。

『だが…安心しろ小僧。俺の勘だが近いうちに会う気がする。俺の勘は外れたことが無いんだ、間違いないさ。』

そう言い残すとライネストは光に包まれ消えた。部屋は自分以外の人の気配は無くなり静寂が訪れる。

最後に当てにならない答えを寄越したものだ、と溜息を吐き時計を見る。

アルカート陛下への謁見はもう少し後でも問題なさそうだと判断し、自国への書簡を作り始めた。

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