再会と邂逅Ⅲ 5
魔法を消すと母や陛下がジッと私を見ていた。何かおかしなことをしていただろうか、と思い返してみる。が特段、おかしなことをした記憶はなく、どうしたのか尋ねてみると。
「クレアの魔法は綺麗だなと思ったの。属性色が輝いているみたいで…流石は私の愛し子ね。」
そう言って私を抱きしめる。母の温かさが心地良い、頭を撫でてくれる手が気持ち良い。
「属性の色が輝くとは…。天賦の才か、もしくは師事した者が素晴らしいか。クレアには驚かされるな。」
陛下は驚くというよりは感嘆に近い感情を示していた。才能はない、ただシオンに魔力の使い方を基礎から教えてもらっただけ。それがこんなに珍しいこととは思わなかった。
「クレアは本当に凄い女性ですよ、父上。そんな彼女を誇らしく思います。」
「…確かに凄い、が誇るにはまだ早いだろう?話は終わってないんじゃなかったのか?」
終わっていない話とはつまり、私達の婚約、婚姻の話だ。
「えぇ、私はまだ認めておりませんので。…話は一旦ここまでにしましょう。」
コホン、と咳払い一つをして母はシリーネを見つめ、和やかな空気から張り詰めたようなものに変える。
母がシリーネの右手側に回り、私は反対側へと行き深呼吸をする。ここからだ、望んだ未来を手にするには。未来を、自分を本当に変えるのは。
「では始めましょう。…クレア、安心なさい。貴女なら出来るわ、大丈夫よ。」
私の思いを悟ったように、大丈夫だと言葉を掛けてくれる母。それだけでも充分に安心が出来るけれど、更に私を包み込むような優しさが伝わってくる。それは母の言葉ではなくて、私の右の掌から。
温もりを感じる方へ顔を向ければ、そこには優しい笑みをしたユリウスがいる。
「これくらいしか出来ないのが歯痒いが…。クレアなら絶対に大丈夫だ、何があろうとも。」
一歩間違えば期待が過剰に感じて、不安は増すような言葉。でもユリウスが言ってくれたものに、そんなことはなくて。
ただただ信じてくれているのだと分かるのが、どれだけ力になることか。
だから握ってくれる手に力を込めて握り返す。
貴方の気持ちはちゃんと伝わっている、と返すために。
「…絶対、成功させますから。」
この一言に全てを詰め込んで。