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闇の令嬢、愛を思い出す  作者: 雨音祭
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再会と邂逅Ⅲ 4

「さて…そろそろ馴染んだ頃、かしら。ちょっと見てくるわね。」

手首の治癒を終え、四時間程経った頃に母はシリーネの側に行く。四時間もあればゆっくりと出来たし、それぞれの気持ちはどうにしろ和やかなものだった。父やサイサスともお茶をしたい、そう思える程には。

「クレア、こっちに来てくれるかしら?」

母からの呼び掛けに席を立とうとすると、ユリウスが先に立ち椅子を引いてくれた。この四時間程、ユリウスはずっと私の世話をして過ごしていたが、彼自身も休めたのだろうか。

「有難うございます。…ユリウス様のおかげでゆっくり出来ました。」

「なんて事はない。俺も君にあれこれ出来て楽しかった。」

そう言って笑う彼の表情に嘘は無いように思えた。気を張っている中、私のことばかりをしていては余計に疲れたのではないかと心配したが、問題なかったようだ。

ユリウスと共に母の近くへ行き、シリーネの顔色を確認する。

「…先程より血色が良くなったようですね、表情も幾分か和らいだようで。」

シリーネの額の汗を拭いながら、母は頷く。

「循環がある程度は行われて、それに体も慣れたからでしょう。……でもここからよ。」

母の言葉に今度は私が頷く。そうだ、本当の正念場はここからなのだ。血管が多く通っており、同じだけ魔力も流れている場所…心臓部が残っている。位置、魔力の量が僅かでも間違えば取り返しのつかないことになる。

そんな未来が訪れないように気を張らねば、と背筋を伸ばしたとともに魔力の調節を始める。もちろんまだシリーネの体に向けてはいない、ただ宙に向かって行っているだけのイメージトレーニングに過ぎない。先程よりも更に細く、グッと刺すようなものではなく、徐々に入れ込んでいくような風に。

今回は一気に消してしまうと魔力の流れが荒れてしまう、故に少しずつ少しずつ消して魔力の流れを整えながら。

(…大丈夫、この感覚はシオン様と特訓してきたもの)

何度も何度もシオンが作り上げた幻影に、シオン自ら教えてもらったもの。

(『貴女なら出来るわ、大丈夫。』そう仰ってくれたわ)

シオンの言葉は聞けば聞くほど心にスッと届く。押し付けがましいものではなく、本当に出来ると信じてくれているから出てくる言葉に感じる。まるで母の言葉のように。

フレイズの件以来、シオンとは会えてはいないが見守ってくれてるに違いない。そう考えると過剰になっていた緊張が適度になる気がする。

それに今は一人ではない、母がいて陛下がいて、ユリウスが側にいてくれるのだ。背負い込む必要はない、ただやるべきことをやるだけだ。

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