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6.始めての食堂

 食堂に着くと、私はその広さに驚いていた。

 なんというか、食堂と言うよりはお洒落なカフェの様な作りだった。

 木目調の落ち着いた雰囲気で、壁側には大きな窓が囲うようにある為、陽の光が室内に入って来る。

 そして外にはテラス席もある。


(すごい……!)


 今はお昼時な事もあり混雑していた。


「結構混んでるな」

「そうね、お昼時ですものね。でも席はまだ空いているみたいね」


「シンリー?」

「こんな大きい食堂…始めて見ました!」


 私が驚いて立ち止まっているとルカルドに名前を呼ばれて我に返った。


「そうだな、この学園は全寮制だから、それだけ食堂も大きいって事だろうな。他にもカフェもあるらしいよ。今度行ってみようか」

「カフェかぁ、色々あるんですね!」


(学園の中にカフェがあるなんて、やっぱりすごい所なんだなぁ)


 私達は食事を注文する為に列に並んだ。

 その間にメニュー表を確認していたけど、種類が多すぎて迷ってしまう。

 メインメニューの他に単品のおかず、サラダやスープ、更にはデザートまである。

 しかもこの学園にいる生徒はどれを食べても無料(ただ)だ。素晴らしすぎる!


 私は欲張って沢山注文しようとしているとルカルドに笑われた。

 恥ずかしくなったので、1品づつ注文することにした。

 注文した料理を受け取ると私達は外のテラス席へと向かった。


「シンリーさんは、お腹が空いていたのかしら?」

「……はい、でも少し多かったかも。勿体ないから全部食べますけどっ」


 3人でテーブルを囲む様に座っているのだが、明らかに私の席の前に置かれている料理の量が一番多かった。

 それに比べて二人はランチセットメニューを選んでいた。

 私もそれにすれば良かったと後悔した。


「いただきますっ! お、美味しいっ」


 私はきのこのクリームパスタを選んだのだけど、たっぷり乗ったチーズが絡んであまりの美味しさに顔が緩んだ。

 夢中になって食べ続けていると視線を感じて顔を上げた。

 するとルカルドと視線が合った。


「……?」


「シンリーは随分と美味そうに食べるな。食べながらすごく幸せそうな顔をしているから、つい見入ってしまった」

「……っ!! ごほっ、変な事を急に言うのは止めてくださいっ」


 突然そんなことを言われて、私の顔は見る見るうちに赤く染まっていく。

 それと同時に驚いたことでむせてしまい、ルカルドが水を手渡してくれた。


「大丈夫か?」

「へ、平気です!」


 ルカルドは心配そうに私の顔を覗き込んできた。

 突然、ルカルドとの距離が近くなり、私は慌てるように顔の向きを変えると水を一気に飲み干した。


「ルカルド様、シンリーさんを驚かせては可哀そうよ」

「悪い。そんなつもりはなかったんだが……」


 ロレッタの言葉にルカルドは困った顔を浮かべていたので、私は「大丈夫です」とすぐに答えた。


(大丈夫じゃないっ…!こんなの…ゆっくり食べられないよ…)



「ルカルド様、この後のご予定はありますか?良かったら私と」

「ああ、悪い。この後はシンリーと学内を周ることになっているんだ」


 ルカルドはロレッタの言葉を遮る様に答えた。


「そうなのですね。それならば私もご一緒させて頂いても宜しいですか?」

「あ、あの……私、もうお腹いっぱいで暫く動けなさそうなので、二人で行って来てください」


 本当に食べ過ぎて辛いし、やたらと絡んで来るルカルドと離れたかった。

 だから私はロレッタと二人で回ることを提案した。


(二人は知り合いの様だし、問題はないよね?)


「無理して全部食べなくても良かったんだぞ? 大丈夫か?」

「でも、残すなんて勿体ない事は出来ないので。それにすごく美味しかったから、今は苦しいけど幸せです」


 私は笑顔で答えた。


(こんなこと言ったら平民だから食い意地が張ってるって思われるかな)


「シンリーさん、大丈夫?」

「はい。心配かけてしまい、ごめんなさい」


 ロレッタは心配そうな顔で私に言ってくれた。

 私は申し訳ない気持ちを感じながら、苦笑しながら答えた。


「ルカルド様、シンリーさんは辛そうなので残念ですが二人で行きましょうか」

「ロレッタ嬢、俺はシンリーが心配だからもう少しここに残るよ。ロレッタ嬢は他の友人と学内を周ってきたらいい。俺達の事は気にしなくていいよ」


 ロレッタが席を立ちあがると、ルカルドは顔を上げてそう言った。

 ロレッタはルカルドにそう言われると驚いた顔をしていた。もちろん私も驚いていた。


「私はここで少し休憩していたら大丈夫だと思うので、本当にお気になさらず。二人で行って来てください!」

「シンリーさんもそう言ってくれている事だし……」


「それなら、シンリーが動けるまで俺もここで待ってるよ。ロレッタ嬢に待っててもらうのも悪いし、それこそ時間の無駄になるだろう?だから俺達に構う事はないよ」

「「……」」


 ルカルドの言葉は明らかにロレッタを避けるような言い方に聞こえた。

 ロレッタもそこまで言われてしまうと言い返せなくなり困った表情を浮かべていた。


「……分かりました。私は今日はここで失礼させて頂きますね。シンリーさん、お大事に、ね」

「はい、ありがとうございます」


 ロレッタは私の方に視線を向けると柔らかい表情で言った。

 私は今のやり取りを見てしまったせいか、どんな顔をしたらいいのか分からなかった。


 挨拶をするとロレッタは席を離れて行き、再びルカルドと二人になってしまった。

 ルカルドは明らかにロレッタの事を避けていたが、二人には何かあるのだろうか。


 だけど、そんなことは聞けるはずもなかった。

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