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5.廊下での出会い

 ホームルームが終わると、ルカルドの周りに令嬢達が集まって来た。

 王子だからって言うのもあるけど、ルカルドの容姿は美しい。

 私も油断したら見惚れてしまう程だ。

 ルカルドに婚約者や恋人がいるのかは知らないけど、令嬢達からしたらほっとけない存在なのだろう。

 私はそんなことを考えながら帰りの支度をしていた。


 今日の日程は入学式と顔合わせの意味を込めたホームルームで終了となる。

 なので今日はこれで解散となり、本格的な授業は明日からスタートする。



「ルカ様ー、これから私達と一緒に学園を周りませんか?」

「お時間ありましたら、是非」


 キャッキャッと楽しそうな声をあげながら令嬢達はルカルドの事を誘っている様子だった。

 ルカルドは困った表情を受けべると、私の方に視線を向けた。


「悪いな、先約があるんだ」

「私の事はお気になさらず。折角のお誘いの様ですし、行って来てください」


 私がにこっと微笑んで答えると、ルカルドは僅かに目を細めた。


「そんなことは出来ないな。誘ったのは俺の方だからね。君達悪いね、またの機会に誘ってくれたら嬉しいよ」


 ルカルドはすまなそうに答えると令嬢は「残念です」と言って離れて行った。


「シンリー、準備が出来たなら行こうか」

「……はい」


 ルカルドは私が帰る支度が出来ていることを確認すると優しい声でそう言った。

 私は断ることも出来ずに、渋々小さく頷いた。


(私とじゃなくてさっきの女の子達と一緒に行けばいいのに……)



 ***



「シンリーは先に行きたい所はあるか? 一応食堂や、移動教室で使う場所は先に見ておこうと思うんだけど」

「特にはないかな。良く使う場所は見ておきたいですけど」


 教室を出ると、私達は並ぶように廊下を歩きながら話し始めた。


「それなら先に食堂に行って食事でもしていこうか。もう昼だからな」

「そうですね、実は私、お腹空いてました」


 食事という言葉を聞くと、私は思わず嬉しそうに答えてしまった。


「そういえば、調理室もあるらしいな。シンリーは見たいんじゃないか?食事が終わったら行ってみようか」

「え?そうなんですか?私も使っていいのかな。後で先生に聞いてみよう!でも、シモンズ先生じゃない先生に……」


 私が目を輝かせながら独り言を言い始めると、隣にいたルカルドはその様子を見て突然笑い始めた。


「くくっ」

「……っ!? どうしたんですか?」


 突然笑い始めたルカルドに私が動揺していると、ルカルドは「悪い」と軽く謝った。


「シンリーがあまりにも楽しそうにはしゃいでいたから。なんだか子供みたいで可愛らしいなって思ってね」

「こ、子供……」


 子供と言われ不満そうな顔を見せる私を、ルカルドは微笑ましそうに見ていた。

 そのルカルドの表情を見た瞬間、胸の奥がドキッと鳴った。


「本当に君は……」

「……?」


 僅かにルカルドの口元が動いたが、余りにも小さかった為、私の耳には届かなかった。

 私が聞き返すと「なんでもない」とルカルドは答えた。



 廊下の角を曲がった瞬間だった。

 突然、私の目の前に女子生徒の姿が視界に入ってきた。

 気付いた時には既に止まれず、そのままぶつかってしまった。


「「きゃっ…!!」」


 ぶつかった衝撃で倒れそうになった瞬間、ルカルドに抱き止められた。


「大丈夫か!?」


 ルカルドは驚いた顔で私の顔を覗き込んできた。


「大丈夫です……っ!?」


 私は顔を上げて言葉を返すと、至近距離にルカルドの綺麗な顔があり驚いて慌てて離れた。


(び、びっくりした……!)


「あのっ、すみません。大丈夫でしたか?」


 私はぶつかってしまった女子生徒の方に視線を向けて心配そうに問いかけた。


「ええ、大丈夫よ。貴女こそ大丈夫? ごめんなさいね、前をちゃんと見ていなかったわ」


 女子生徒は苦笑を浮かべながら柔らかい口調で答えた。


「私の方こそ、ちゃんと見ていませんでした。本当にごめんなさい」

「ふふっ、それならお互いさまって事ね」


「……ロレッタ嬢…」


 私達のやり取りを見ていたルカルドは小さく呟いた。



「あら、ルカルド様。後で挨拶に行こうと思っていたのよ」

「……ああ、そうか」


 どうやら彼女の名前はロレッタと言うらしい。

 ルカルドとは知り合いの様だったが、ルカルドは曇った表情を見せていた。


(二人は知り合いなのかな…?)


 そんなことを思っているとロレッタと再び視線合い、にこっと私に微笑みかけた。

 ロレッタはダークブラウンの髪に、エバーグリーン色の瞳をしていてどことなく大人っぽい雰囲気を感じた。

 すらっとした体系で、一言で言えば美人だ。

 リボンの色は緑色なのでBクラスなのだろう。


「私はロレッタ・フランシスと言います」

「私はシンリーです」


 ロレッタは柔らかい口調で私に挨拶をしてくれたので、慌てて私も返した。


「シンリーさんね、私の事はロレッタと呼んでね。ルカルド様のご友人、かしら?」

「え、えっと……」


 友人と聞かれると困ってしまう。正直友人では無い気がする。

 困った私は隣にいたルカルドの方に視線を向けた。


「シンリーは俺のクラスメイトだよ」

「あら、そうなのね。二人はこれから食堂に行くの?」


 ロレッタが聞くとルカルドは「ああ」と小さく答えた。


「もうお昼の時間だものね。良かったら私もご一緒させて頂いても宜しいかしら?」

「はいっ、是非! ルカ様、いいですよね?」


 ロレッタが良い人そうだったので、思わず先に答えてしまった。


「ああ、そうだな」


 私がルカルドに視線を向けると、ルカルドは小さく答えた。

 ロレッタが加わり、3人で食堂へと向かう事になった。


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