40.初めての
「ルカ様に、一つだけ聞きたい事があるんですが……。いいですか?」
「いいよ。なんでも聞いて」
私が問いかけると、ルカルドは抱きしめる力を緩めて私の事を優しい瞳で見つめた。
聞くのは正直怖かった。
だけど確かめたい。
「ルカ様は、私の事が好きだって言ってくれましたけど、それってシンリーとしての私ですか? それとも幼い頃に会ったラヴィニアを私に重ねてたから?」
私はぎゅっと手を握りしめて、思い切って問いかけた。
私が切なそうな顔で見つめていると、ルカルドは何かを思い出す様にふっと小さく笑った。
「最初はラヴィに似てるシンリーがすごく気になった。シンリーに近づけばラヴィの真実が分かるかもしれないと思って近づいたのも事実だ。だけどシンリーの傍にいる様になって、君の仕草や表情の一つ一つがとても可愛らしく見えてそれをもっと見たいと思うようになっていったんだ。自分でも最近気付いたんだけど、俺はどうやら独占欲が強いらしい。シンリーの傍にいるのは俺だけでありたいと思うし、可愛い姿は俺以外の男には見せて欲しくない。だからロベルト皇子にも少し嫉妬した。いや、少し所ではないな……」
「……っ!」
ルカルドは少し照れながら話していた。
そんな姿を見た私もつられる様に頬が熱くなっていくのを感じた。
「さっきの質問の答えだけど、俺が今好きなのはシンリーだ。俺の中でシンリーがラヴィかもしれないという疑問は多少はあったけど、どっちかと言うと別人だと思っていたんだ。だからラヴィに重ねて見てたわけじゃないよ」
「そっか、そうなんですね」
私はその言葉を聞いて嬉しそうに表情を緩めた。
「本当にシンリーは可愛いな。だけどその笑顔も、もう俺だけのものだ」
「……っ」
ルカルドは私の額にそっと口付けた。
額に触れるルカルドの熱を感じて、顔の奥から熱が籠っていくのを感じる。
「シンリーは本当に分かりやすい反応をするな。そういう所すごく好きだ。可愛い」
ルカルドは優しい声でそう呟くと、今度は頬に口付けた。
私は恥ずかしさで完全に固まってしまっていた。
「恥ずかしい?」
「はい、こんなことされたことなんて無かったからっ」
私は顔を真っ赤に染めながら小さな声で呟いた。
「ここにも口付けたい。いいか?」
「……き、聞かないでくださいっ」
ルカルドはそう言うと私の唇に指を滑らせた。
「シンリー、恥ずかしいなら目を瞑ってて」
私はその言葉に頷くと、ぎゅっと強く目を瞑った。
「くくっ、そんなに必死に瞑らなくても大丈夫だよ。っていうか、可愛すぎて困るな」
「……っ!! そんなに笑わないでくださいっ」
突然笑われてしまい私は恥ずかしくなり耳まで真っ赤にしてしまった。
私がむっとした顔で軽く睨むとルカルドは「ごめんな」と小さく呟いた。
「……」
そしてルカルドの顔が近づいて来て、唇に何かが当たった。
温かくて柔らかかった。
「……ああ、本当に可愛すぎて困るな。もっとしたくなる」
「もっと?」
私が問いかけるとルカルドは小さく笑って、角度を変えながら何度も触れるだけのキスを繰り返していく。
それから暫くして漸く唇を解放されると、今度はそのまま抱きしめられた。
「やばいな、止まらなくなりそうだ」
「……っ」
私の耳元でぼそっとそんな声が聞こえた。
「俺、相当にシンリーの事が好きらしい。だから絶対にシンリーを手放したりなんてしないからな」