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36.誤解を解きたい

「シンリー、僕達は兄妹なんだからこれからは僕には何も遠慮はしないで」

「で、でもっ……」


 私が困った顔をしていると、ロベルトは優しい笑みを浮かべながら私の隣へと座った。


「でも、じゃないよ。君は僕の可愛い妹だ、漸く会えたんだし僕はシンリーにはもっと甘えてもらいたいな」

「……っ」


 突然そんなことを言われても困ってしまう。

 確かにロベルトは兄で間違いはないけど、10年も会っていなかったのだ。

 戸惑うのも仕方がない事だと思う。


「ふふっ、突然そんなことを言ったら困らせてしまうかな。だから少しづつで構わない。僕はシンリーの味方だ、それは昔も今も変わらないよ。だから僕をもっと頼って欲しい」


 ロベルトは私の髪を優しく撫でてくれた。

 兄だと分かった今でも、やっぱりドキドキしてしまう。


「それなら一つ、お願いがあります」

「なにかな?」


「……ルカ様の事です。ルカ様は絶対に敵では無いです」

「絶対に?どうしてそう言い切れるのか聞いてもいい?」


 ロベルトはルカルドに対してあまり良くは思っていない事は前から何となく気付いていた。

 それはルカルドも同じだ。


 ルカルドはロベルトと言うよりは、オルヴィス帝国に対して不信がっている。

 ロベルトから帝国の事情を聞いて、ラヴィニアを病死扱いにしたのは仕方のない事だったと分かった。

 だからその誤解を解きたい。


 でも国の機密情報は明かせない。

 ましてやルカルドは王族だ。


 だからまずはロベルトからルカルドを信じてもらうのが良いと思った。

 お互い疑いあっているままじゃ何も変わらない。

 私は二人には仲良くして欲しかった。


「ルカ様は、ラヴィニアの死をずっと病死じゃないって疑っていました。それを隠した帝国をずっと不振に思ってます。詳細は話せなくても、なんらかの説明をしてもらうことは出来ませんか?」


 私は真直ぐにロベルトの目を見つめながら、懇願する様に言った。


「そうだね。ルカルド王子は王太子で、いずれはドラグレス国の王になる。同盟国として不信を持たれるのは良くない事だよね。シンリーは彼の事が好きなのかな?」


「……っ、な、何をいきなり言うんですか!?」


 突然そんなことを言われると私の顔は真っ赤に染まり、慌ててしまった。


「ふふっ、シンリーは本当に分かりやすいな。実はね、僕もルカルド王子と同じでドラグレス国を疑っていたんだ。ラヴィニアの誘拐に関わっているんじゃないかってね」

「……お互い私の事で疑ってたって事ですか?」


「結果的にはそうなるね。お互い情報が足りなくて焦っていたのかもしれないな。だけどシンリーが話してくれた事で、一つだけ思い当たる事があるんだ。僕はとりあえずそれを確かめてみようと思う」

「それって黒幕に心当たりがあるってことですか?」


 私が聞くとロベルトは「うん」と小さく頷いた。


「誰ですか?名前を聞けば思い出すかも」

「ごめん、今はまだ言えない。少しだけ調べてみるから暫く待って欲しい」


 ロベルトは名前を教えてはくれなかった。

 きっとそれには何か事情があるのだろう。


「分かりました。でも、ロベルト様も気を付けてくださいね」

「ありがとう、だけど僕なら多分平気だよ。それと、ルカルド王子とは一度ちゃんと話をしてみようと思う。シンリーを守る上でも彼の協力は必要になると思うからね」


 私はその言葉を聞くと自然と笑みが浮かんだ。

 ルカルドの事を思い切って伝えて良かったと思った。


「ありがとうございますっ」

「ふふっ、やっぱりシンリーはルカルド王子が好きなんだね」


 そんな私の顔を見てロベルトは小さく呟いた。


「ルカ様には、い、言わないでくださいっ……」

「え……?」


 私が恥ずかしそうに答えるとロベルトは驚いた顔をしていた。


「……?」

「いや、言わないも何もシンリーの気持ちには彼も気付いてるんじゃないかな? だってシンリーってすぐに顔に出るから、誰が見てもすぐに分かるよ?」


 ロベルトは可笑しそうに笑っていた。


「うそ……、どうしよう……」

「別にどうもしなくていいんじゃないかな? 分かりやすいのはシンリーだけじゃないからね」


 不安気な表情をする私を眺めながら、ロベルトは含ませた言い方をした。


「それはどういう意味ですか?」

「さぁ? どういう意味だろうね」


 ロベルトは少し意地悪そうな顔で小さく笑った。

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