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3.王子が絡んできた

 入学式は恙無く行われた。

 学園長の話から始まり、生徒会長からの挨拶と新入生代表の挨拶、そして教師の紹介へと進んでいった。

 新入生代表は入学試験で1位を取った者がするらしく、選ばれたのドラグレス国の王太子であるルカルドだった。

 私は席から挨拶を聞いていたけど、堂々とした態度で喋っていてさすがだなと感心していた。


 後から知ったのだけど、この学園はかなり有名な魔法学園らしい。

 なんとかっていう大魔術師や、王立魔術団に在籍している人達もここの卒業生が殆どだとか。


 私の住んでる場所から一番近い魔法学園がここだったという理由で受験したのだけど、希望したら全員がこの学園に通えるものでは無かった。

 年齢と魔法が使えれば誰でも入れると思っていたけど、それはあくまで入学資格であり試験を受けて一定の点数を取れないと入学は出来ないらしい。


 入学式が終わると新入生は自分のクラスの教室に散って行った。

 私はドキドキしながらAクラスの教室に入った。


 既に数名が教室にいて、賑やかな話声が聞こえて来た。

 席の指定はなさそうだったので、私は目立たない一番後ろの端の席へと座った。


 私は不安で仕方がなかった。

 まさか自分がAクラスになるなんて思ってもいなかったからだ。

 このクラスには平民は私以外に誰かいるのだろうか…。

 Aクラスになってしまったことで、友人を作るのは絶望的になってしまった。


 周りを見れば、知り合いなのか仲良く談笑しているグループがいくつかあった。

 そんな光景を見ていると羨ましく思えてくる。

 かと言って、貴族の生徒に話しかける勇気なんて持ち合わせてはいない。

 私は小さく溜息を漏らす事しか出来なかった。


 暫くすると一際賑やかな話声が聞こえて来て視線を向けると、令嬢達に囲まれながら教室に入って来たルカルドと目が合った。

 私は焦って露骨に目を逸らしてしまった。


(あんなに女の子に囲まれて。やっぱり王子って人気なんだなぁ)



「隣、空いてる?」

「多分、空いてると思いま……」


 暫くすると不意に頭の上から声が響いて来た。

 顔を上げるとそこにはルカルドの姿があり私は固まってしまった。


「そうか、良かった」

「……っ!!」


 ルカルドは何故か私の隣の席に座った。


(なんで?席はいっぱい空いてるのに……)


「殿下は、前の方に座った方が宜しいかと……」

「殿下なんて呼び方はやめてくれ。クラスメイトなんだし俺の事はルカでいい。シンリーが前の席に移動するなら俺も行くけど…どうする?」


 ルカルドは平然とした態度で話して来たけど、私は動揺していた。


「殿下の事を名前で呼ぶとか、私には無理です」

「どうして? 俺はシンリーの事を名前で呼んでるし、この学園内では身分は平等だってさっき話したよな?」


 そんな事を言われても、はいそうですかって受け入れられるわけがない。

 私は平民で、ルカルドは王子で身分が違い過ぎる。

 何より、目立ちたく無いので私に絡んで来るのは止めて欲しい。


「じゃあ、こうしようか。シンリーがどうしても無理だって言うのならば、俺の事をルカと呼ぶのは命令だ。それなら問題なく呼べるだろ?」

「はい?」


 私の額からは変な汗が流れて来た。


「シンリーにだけ頼んでるわけじゃない。この学園にいる間は俺はただの一生徒で、シンリーとはクラスメイトだ。王子だからって特別な目で見られたくないんだ」


 ルカルドは少し悲しそうな瞳をしていた。

 学園にいる時だけは、王子ではなくただのルカルドになりたいのかな。

 特別な目で見られたくないって…、そういう事だよね?


(それに…そんな悲しそうな目で見られたら……)


「わかりました。ルカ様って呼びます」

「分かってくれて嬉しいよ、シンリー」


 私がそう答えるとルカルドはふっと小さく笑った。


「ルカ様ー! こちらの席に来ませんかー?」


 私達が話していると前の方から令嬢達がルカルドの事を呼んでいた。


「呼ばれてますよ、私の事はお気になさらず行って来てください」


 私がにっこりと作り笑顔で答えると、ルカルドは「シンリーも行くか?」と聞いてきたので、私は即答で断った。


「私は端が好きなのでここで大丈夫です。殿……ルカ様は是非、行って来てください」

「そうか。分かった」


 納得してくれたみたいで良かった。

 その言葉を聞いてほっとしていると、ルカルドは前にいる令嬢達の方に視線を向けた。


「悪いな、俺は今日はここに座ることにするよ」

「……!?」


 ルカルドはそう令嬢達に向かって言うと、私の方に視線を戻した。


「シンリー、ホームルームが終わったら学園内を少し周ってみないか? 色々先に確認しといた方がいいだろう」

「私と……ですか?」


「ああ、シンリーに聞いてる」

「……っ、大丈夫ですけど」


 私が困った顔で答えると、ルカルドは微笑んで「それなら決まりだな」と言った。

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