27.嫉妬
目を覚ますと、硬い床の上にいた。
辺りに視線を向けると薄暗い場所で、湿気があるのかじめじめとしていて、とても居心地が悪い場所だった。
そして目の前には鉄格子があり、私はその中に閉じ込められている様だった。
そして直前の記憶が蘇り、私は誘拐されたことに気付いた。
私を誘拐した犯人は見たことがない顔だったし、気配を消していることや手際の良さを考えればそういう事に慣れた者の仕業で間違いないのだと容易に想像がついた。
今回誘拐された事で私の過去の記憶の一部分が蘇った。
もしかして今回私を捕らえた者は昔私を殺そうとしてた者達なのだろうか…、などと考えを巡らせてしまうと恐怖で体がガタガタと震え始める。
ラヴィニアは公には死んだ事になっている。
私が生きていると知っている者が犯人だとすれば、どうして今なのだろうという疑問が沸き始める。
そんな時だった。
奥からコツコツと誰かの足音が聞こえてくるのを感じた。
私は身構えた。
今の私なら、ある程度魔法は使えるから簡単には死んだりはしない。
もしもの時の為に急いで補助魔法をかけようと試みるも、何度試しても魔法が発動しない。
(どうして?)
「ふふっ、何度やっても無駄よ。この場所は魔法封じしてあるのだから」
「……っ!」
私の目の前に現れたのはロレッタだった。
「驚いた? こんな場所に入れられて」
「どうしてっ、こんなことするんですか!」
私が困った顔で訴えかけると、突然ロレッタは笑い始めた。
「ふふっ、どうして?そんなの決まってるじゃない。貴女が邪魔なのよ! 私のルカルド様に色目を使って近づいて、本当に許せないわ! 前回の事にも懲りずにまだ近づくなんて、本当にしつこい女ね。今日なんて街で二人で仲良さそうにして……、本当に許せないわっ!」
「私、色目なんて使ってませんっ!」
ロレッタの瞳は怒りの色に染まっている様に見えた。
「シンリーさんは嘘つきね。貴女、ルカルド様の事好きなんでしょ?」
「それは……」
私が否定出来ずに言葉に詰まっていると、ロレッタは苛立った表情を見せた。
「貴女みたいなただの平民風情が王族であるルカルド様に近づくこと自体おかしいのよ! いい加減身分をわきまえたらどうかしら!」
「……っ、そんなの分かってますっ!」
身分のことばかり言うロレッタに腹が立った。
身分が違うだけで、好きになる事も許されないの?
同じ人間なのに……。
「あら、怖いお顔をしちゃって。これだから平民は嫌ね。シンリーさん、貴女には暫くここに居てもらうわ。私とルカルド様の婚約が決まるまで、これ以上邪魔はさせないわよ!」
「……っ!」
ロレッタはフンと鼻で笑うと「せいぜい大人しくしてなさい」と捨て台詞を吐いて出て行った。
ロレッタが居なくなり辺りは再び静まり返っていた。
(どうしよう、なんとかしてここから出ないと……)
私は魔法を何度か発動させようとしてみるも、駄目だった。
ロレッタが言う様にこの場所は魔法が封じられている様だ。