23.嘘が本当に
「き、緊張した……」
生徒会の棟から出ると一気に緊張から解放されて、体から強張っていた力が抜けていった。
足にも力が入らなくなり、私はその場にずるずると座り込んでしまった。
「シンリー、大丈夫か?」
「大丈夫じゃないです」
私が苦笑いして答えると、ルカルドは困った顔をした。
「立てそうか?」
「はい、なんとか」
ルカルドは私の手を引っ張り、立つのを手伝ってくれた。
なんとか立つことは出来たが、力が入らないせいか足元がふらついてしまう。
「俺にこのまま掴まっていていいから、この先にあるベンチまで歩けそうか?」
「はい……」
ルカルドに掴まりながら脇にあるベンチまで向かった。
掴まりながら歩いてるせいか、ルカルドとの距離感が近すぎて心臓がバクバクと鳴っていた。
そして顔の奥が熱くなっていくのを感じる。
漸くベンチにまで辿り着くと、私は少し離れて座った。
恥ずかしさから俯いていると、ルカルドは肩が当たる距離にまで詰めてきた。
「大丈夫か?」
「……っ!?」
顔を上げると、私の顔を覗き込もうとしているルカルドの顔がすぐそばにあって更に焦ってしまう。
頬も焼ける様にじわじわと熱を持っていくのを感じる。
(お願いだから、いきなり近づかないでっ)
「生徒会、どうしよう……」
私は慌てる様に話題を変えることにした。
「突然で驚いたよな、それに俺がいるのにあんなこと言って来るなんてな」
「あんなこと?」
ルカルドは思い出す様に不機嫌そうな顔で呟いた。
「休日シンリーを誘うとしたことだ。俺がいなかったら絶対誘いを受けてただろ?」
「私が断れると思いますか?」
ルカルドの言葉に私は困った顔で答えた。
平民である私が、皇子からの誘いを断れるわけがない。
「ルカ様のおかげで助かりましたっ」
私がへらっと笑って答えると、ルカルドは腑に落ちない顔で私を見ていた。
「シンリーは休日暇なんだよな?」
「特に予定は……」
「それなら今週の休日は街でも行くか」
「それって……、私もですか?」
「シンリー以外に他に誰がいるんだ? 俺と二人じゃ不満か?」
「そんな不満とかはないですけどっ。二人ってなんかデートみたいで…」
私は焦りから思わず「デートみたい」と漏らしてしまうと、ルカルドはふっと小さく笑った。
「そうだな、デートだな。だから予定は他に入れるなよ?」
「……っ!」
ルカルドにデートと言われると、嬉しい様な恥ずかしい様な気持ちになってしまう。
「シンリー、返事は?」
「は、はいっ」
私が慌てて答えるとルカルドは「約束だからな」と微笑んでいた。
(どうしよう!ルカ様とデートとか今からドキドキしちゃう)
ルカルドがついた嘘が本当になってしまうなんて思いもしなかった。