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22.生徒会室に呼ばれた

 私は生徒会室に来ていた。

 この学園には生徒会の為だけに作られた棟が存在している。

 棟の中には役員の執務室、会議室、そして温室まであるらしい。


 ここに呼ばれていたのは私だけではなく、隣にはルカルドの姿もあった。

 そして目の前には生徒会長であるロベルトがいて、私は緊張した面持ちで立っていた。


 ロベルトは執務椅子に座りにっこりと微笑んでいる。

 隣に立っているルカルドの方に視線を向けると、ロベルトとは対照的にムスッとした表情をしていた。

 そして私はと言えば、緊張で顔が引き攣っているのだろう。


「二人とも良く来てくれたね。もう聞いているとは思うけど、今年の新入生の生徒会役員は君達二人を選任させてもらった。これは生徒会長である僕が決めたことだ」

「ま、待ってくださいっ! ルカ様はともかく、何故私が選ばれたのかが分からないんですが……」


 私は困惑した顔でロベルトに問いかけた。


(絶対、選出ミスだよね?)


「シンリーはAクラスだよね。生徒会の役員はAクラスの中から選ぶことになっているんだ。だから何も問題はないよ。それに申し訳ないけど、生徒会の決定は絶対だ。だから君には拒否権は無いんだ、ごめんね」

「そんな……」


「生徒会に任命されると特別な制服に変わることは知っているよね? 既に手配済みだから、あと数日もすれば届くはずだ。届いたら今着ている制服と交換してね。目立つけど、数日もすれば慣れるはずだよ。ふふっ、シンリーに白は似合いそうだね」

「……っ」


 ロベルトはどこか楽しそうに話していた。


 そんな話を黙って聞いてはいたけど、やっぱり私が生徒会に選ばれるなんて信じられなかった。

 決まったら拒否権は無いとか、そんなの困る。

 私に生徒会役員なんて大役、務まるわけがない。


 私は困惑しながら、何も話さないルカルドを一瞥した。


「さっきから君は不満そうな顔をしているね」

「別に不満ではありません。生徒会に選んで頂き、ありがとうございます」


 ロベルトは目を細めながらルカルドに視線を向けていた。

 ルカルドは表情を変えることなく、淡々とした口調でそう言った。


(やっぱり、この二人って仲悪いのかな。ルカ様はロベルト様のこと疑っているし、当然かもしれないけど。でも、この空気重すぎる)


「そうか、なら良かったよ。制服が届いたら正式に生徒会役員として発表の場を設けさせてもらうよ。詳しい事はまた後日にね。もう下がっていいよ」

「はい……」


 私達は一礼すると部屋から出て行こうとした。



「シンリー、君には少し話があるんだ。残ってもらえるかな?」

「え?私ですか?」


 ロベルトに呼び止められて振り返ると、何故か隣にいたルカルドが私の腕を掴んだ。


「シンリーにどんな用件があるのか聞いても宜しいですか?」

「ルカ様っ……」


 ルカルドは簡単には外れない位、しっかりと私の腕を掴んでいた。

 強く握られている為圧迫されるような感覚を覚えて、私は表情を歪ませた。


「ルカルド殿下、そんなに強く握ったらシンリーが可哀そうだよ」

「……っ、シンリーごめん」


 ロベルトの言葉にはっとして、ルカルドは私の腕をぱっと離した。

 ルカルドは申し訳なさそうに私の顔を見て謝って来たので「大丈夫です」と答えた。


「大した話では無いんだけどね。次の休日、シンリーは何か予定は入ってる?」

「特には…」


「そうか、ならば一緒にお茶でもどうかな? 一度君とはゆっくり話をしてみたいと思っていたんだ」

「お茶ですか?」


 ロベルトはにっこりと微笑みながら、私をお茶に誘って来た。

 正直ロベルトと二人でお茶なんて緊張してしまう。

 だけど断るなんて失礼な事出来ないし、どうしよう。


「会話の途中にすみません。次の休日ですが、シンリーは俺と過ごす約束をしています」


 ルカルドは突然会話に割って入ってきた。

 そして休日に会う約束なんてした覚えは無かった。

 その為、慌ててルカルドの方に視線を向けた。


「それはおかしいね。今シンリーは特にはって言ったよね?」

「それはっ……」


「シンリーは忘れっぽいから。先約していたのは俺なので、申し訳ないですが諦めてください」

「……」


 その言葉を聞くとロベルトは一瞬驚いた顔を見せた後、突然笑い出した。


「そんなに僕とシンリーが一緒にいるのは気に食わないか?」

「別に、そんなつもりでは」


 楽しそうに笑っているロベルトと、特に表情を変えないルカルド。

 ただ見ただけでは分からないかも知れないが、その場にいる私には分かる。

 不穏な空気が立ち込めていることを。


「今回だけは折れてあげるよ。シンリー、また今度誘わせてもらうよ」

「はい、今回は申し訳ありません」


 ロベルトは怒ってはなさそうで私はほっとした。


「シンリー、行こうか」

「はいっ、失礼します」


 私達は再び一礼すると、生徒会室を後にした。

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