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20.助けてくれた人

 翌日、私は教室に来ていた。

 廊下を歩いている時も気付いたけど、昨日の騒ぎのせいで周囲はやたらと私に視線を向けて来る。

 中にはヒソヒソと私を見て噂話をしている者達もいるようだ。

 教室に入ってもそれは同じだった。


 私は居心地の悪さを感じながらも席に着いた。

 まだルカルドの姿はない。

 こんな所をルカルドには見られたくはないけど、きっとそれは無理な話だろう。


(またルカ様に心配させちゃうかな……)



「シンリーさん、おはよう」

「あ、昨日の……」


 名前を呼ばれて顔を上げると、そこには昨日助けてくれたステラの姿があった。


「私はステラ・カルディアよ。同じクラスだし、知っているかな」

「はいっ、昨日は本当にありがとうございましたっ」


 私はガタッと椅子から立ち上がると、慌てる様にお礼を言った。

 ステラはそんな私の様子を見て柔らかく微笑んでいた。


 ステラ・カルディア

 伯爵令嬢でハニーブランのロングストレートでオレンジ色の瞳をしている。

 私のクラスメイトだけど、彼女とはほとんど話したことはない。

 見た目は少し大人しそうな雰囲気だけど、はっきりと物申すのでしっかりとしているのかもしれない。


「ふふっ、いいのよ。私は見たまでを言っただけだし。だけど、噂になっちゃってるみたいね。この学園って表では身分は平等って言っているけど、それを受け入れられない心の狭い貴族も多いからね。特にシンリーさんの場合はAクラスだし、殿下とも仲が良いから余計に面白くないって思ってる令嬢は多いのかも知れないわね」

「……」


 私はその言葉に苦笑した。


「でも、きっと大丈夫ね。シンリーさんには守ってくれる人がいるもの」

「シンリー……!」


 ステラは何かに気付いたのかクスッと小さく笑った。

 その後すぐに私の名前を呼んで、ルカルドがやって来た。

 ルカルドはステラに視線を向けると、警戒する様に見つめていた。


「ルカ様、ステラ様は…昨日私を助けてくれた方なんです」

「ルカルド殿下、そんなに怖い顔しないでくさい。私は敵ではありません」


 ルカルドはその言葉にきょとんとして「そうなのか?」と聞いて来た。


「ステラ嬢、すまない」

「いえ、私の事はお気になさらず。それよりもルカルド殿下も分かっていると思いますが、今シンリーさんは一部の令嬢達から睨まれています。なのでしっかり守ってあげてくださいね。無理なら私が……」


 ステラは淡々とした口調で話していると、ルカルドはその言葉を遮る様に「分かってる」と答えた。

 その言葉を聞いてステラはほっとしている様子だった。


「これ以上シンリーに辛い思いはさせない。シンリーは俺が守るよ」


 ルカルドは私の方に視線を向けると決意をしたような瞳で見つめ、優しい声で言った。

 そんな視線を向けられて私はドキドキしてしまう。

 火照ってしまいそうな頬を隠す為に、少し顔を俯かせた。


「頼もしいですね、さすがルカルド殿下です。シンリーさん、良かったら私とお友達になって頂けませんか?」

「え?」


 ステラはにこっと微笑みながら言った。

 突然そんなことを言われて困惑してしまい、何故かルカルドの方に視線を向けていた。


 ステラは私を助けてくれたけど、信じていいのだろうか。

 ロレッタの事があるから素直に受け入れていいのか迷ってしまう。


「安心して、私はルカルド殿下の婚約者候補でもなければ、殿下に対しては特別な感情はもっていないから」

「……」

 

 きっぱりと言うステラの言葉にルカルドは困った顔をしていた。

 ステラはロレッタに対しても、王子であるルカルドに対しても一切遠慮なく言いたい事を口にしている。

 先程からわざと棘のある様な言い方をして、ルカルドをチクチクと攻撃しているみたいだ。


「シンリーさんって全属性使えるんでしょ? ずっとすごいなって思っていたの!私ね、ずっとシンリーさんに憧れていたの! だけどいつもルカルド殿下の傍にいたから中々声をかける機会がなくてね」

「私、そんなステラ様に憧れられる様なすごい人ではないですっ!」


 私は慌てる様に言い返した。


「シンリー、全属性を使えるのはすごい事だぞ。だからそんなに謙遜する事はないと思うが……」

「そうです! すごいんです。だから私はそんなシンリーさんに憧れているんです」


 二人にそう言われてしまうと、なんだか恥ずかしくなってきた。

 私は照れながら困っていると二人は可笑しそうに笑い始めた。


「ふふっ、シンリーさんって可愛らしい方なのね。ますます好きになりそう」

「だろう? シンリーは可愛いんだ」


 いつの間にかルカルドとステラは仲良さそうに話していた。

 私は顔を赤く染めながら「可愛くないですっ!」と慌てて言い返していた。


 そんな時、前の扉から担任であるシモンズが入って来た。


「シンリーさん、お友達の件考えておいてね。いい返事待っているわ」


 ステラはそう言うと自分の席に戻っていた。


(ステラ様っていい人そうだけど、信じてもいいのかな……)


「シンリー、ステラ嬢のこと焦って決めることでもないんじゃないか?」

「そうですよね……」

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