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13.ロベルトとの出会い②

 ロベルトは階段を上がって来ると、私達の前で立ち止まった。

 一瞬ロベルトと視線が合ってしまい、私はドキッとしてしまう。

 だけどすぐにロベルトの視線は私から二人の方に向けられた。


「少し話が聞こえて来てたけど、君達はこんな所で何の話をしていたの?」


 ロベルトの鋭い視線がメアリーに向くと、メアリーはそわそわと慌て始めた。

 話が聞こえてたと言ってる事から、おおよその内容は恐らく把握しているのだろう。

 それでいて聞くなんて、ロベルトは言い逃れをさせるつもりは無い様だ。


「そ、それは私達仲が良くて。お、お喋りをしていただけですわ」

「ええ、その通りです。私達は友人とお喋りをしていただけです。うるさくしてしまったなら申し訳ありません」


 メアリーは慌てていたが、シルヴィアは静かに答えていた。

 表情が少し強張っている様に見えたので、シルヴィアは内心焦っているのかもしれない。


「君は……?」


 ロベルトは私の方に再び視線を向けた。


「え? 私ですか? 私は……」

「シンリーさんもそう思うわよね? 私達、仲良く話していただけよね?」


 私が答えようとすると、シルヴィアが言葉を遮り誘導する様に私を見た。

 作り笑いをしている様だが、表情が引き()っている為、怒っているのか笑っているのか良く分からない顔をしていた。


「ねえ、僕は君には聞いてないよ?」

「……申し訳ありません」


 ロベルトは冷たい視線をシルヴィアに向けると、シルヴィアは頭を下げた。

 隣にいるメアリーはどうしていいのか分からず、今にも泣き出してしまいそうな顔をしている。


 ロベルトは怖い人なのだろうか。

 以前ルカルドに、ロベルトには気を付けた方がいいと言われた事を思い出した。


「二人の言う通りです。私達はただお喋りをしていただけです」


 私は怯えている二人を見ていたら、なんだか可哀そうに思えて来て二人の発言に合わせるように答えた。

 緊張から、僅かに声が震えていたのかもしれない。


 ルカルドは王族だけど話しやすくて怖いなんて思ったことは一度も無かった。

 だけど、ロベルトはルカルドとは全く違う印象を受けた。


 決して見た目は怖いわけでは無い。

 口調は静かで落ち着いているけど、敵意を向けた人間には威圧感の様なものを与えてくる様だ。

 こんなに怯えている二人を見るのも初めてだった。


「そうか、君がそう言うなら信じるよ」


 ロベルトは私の方に視線を向けると柔らかく笑んだ。

 先程の敵意は消え、優しい表情に変わっていた。

 その表情を見るとなんだかドキドキしてきてしまう。


「私達はこれで失礼させていただきます」


 シルヴィアは挨拶をすると、頭を軽く下げ速足で逃げる様にその場を去って行った。

 勿論メアリーもそれに続いていった。

 取り残されてしまった私は慌てて挨拶をしようと思ったが、先に言葉を発したのはロベルトの方だった。


「君の名前を教えてもらってもいいかな?」

「私、ですか?」


「ああ、そうだ」

「シンリーと申します。私は貴族では無いので…()()()シンリーです」


 私は以前のルカルドとの出会いを思い出し、無意識に『ただの』を強調してしまった。


「シンリーか、良い名だな。僕の事は入学式の挨拶で知っているかな?」

「はい、皇子殿下」


 私がそう答えるとロベルトは不満そうな顔を浮かべた。


「そんな呼び方は他人行儀の様で嫌だな。ロベルトでいい」

「……そんな、恐れ多くて呼べません」


(他人行儀って、どう考えても他人だと思うけど……)


「どうして? 遠慮することは無い。僕がそう呼んで欲しいって頼んでいるのだからね。君がそう呼んでくれるまでここから動かないよ」

「……っ」


 私が困っていると、ロベルトはクスっと笑い意地悪な顔でそう言った。


 ルカルドといい、ロベルトまで何故こんなにも平民の私に構って来るのだろう。

 平民が珍しいから?

 さすがにそれは無いとは思うけど、不思議でたまらない。

 対応に困ってしまうので、あまり関わりたくはないのに。


「ロベルト、様」


 私は小さく答えた。

 するとロベルトは「聞こえないな」とわざとらしく言った。


「ロベルト様っ」

「……」


 私は困りながらも少し声を上げて呼んだ。

 ロベルトは聞こえているはずなのに何も返して来ない。


(まさか怒った?)


 私は伺うようにロベルトの顔を覗き込もうとした。

 すると視線が合い、私が慌てて謝ろうと口を開こうとした瞬間、突然ロベルトに抱きしめられた。


「……っ!?」


 私は突然の事に驚いて固まってしまった。

 ロベルトは暫くの間私の事を抱きしめ続けていた。


 何が起こっているのか理解なんて出来なかった。

 私の思考回路は完全に止まっていた。


「ああ、ごめん。突然悪かったね。驚かせてしまったよな」


 それから少ししてロベルトは抱きしめている力を緩めると、私の事を解放した。

 私の心臓はバクバクと激しく鳴っていた。


「シンリー、君にお願いがあるんだ」

「お願いですか?」


「僕と友人になってくれないか?」


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