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11.絶対に渡さない-ロレッタside-

 私の名前はロレッタ・フランシス

 公爵令嬢であり、ドラグレス国の王太子であるルカルドの婚約者候補だ。


 ルカルドとの出会いは、初めて参加したお茶会だった。

 あれは私がまだ5歳になってすぐの事だった。


 当時の私は内気な性格で人見知りも激しく、お茶会なんて本当は参加なんてしたくはなかった。

 だけど両親は将来の為に、早く私の婚約者候補を探したかった様だ。

 王家主催のお茶会となれば、沢山の貴族出身の子息や令嬢達が集まる。


 私は参加したのはいいけど、結局誰とも話せないまま時間だけが流れて行った。

 あまりの人の多さに人酔いをしてしまい、会場から離れ一人で庭園を歩いていた。

 王家の庭は広くて気付けば迷子になってしまった。


 慌てて来た道を戻ろうとしても、どちらから来たのかすら分からなくなり、不安で泣き出してしまった。

 そんな時、偶然出会ったのがルカルドだった。


 ルカルドは私に「どうしたの? どこか痛いの?」と心配そうに話しかけて来てくれた。

 私が「迷ってしまったの」と泣きながら答えると、ルカルドは優しく「大丈夫だよ」と言って私を元いた会場まで連れて行ってくれた。

 その際には、ずっと手を繋いでいてくれた。


 それが私にとっての初恋だった。

 あの瞬間、私はルカルドに恋をしてしまったのだ。


 だけど、ルカルドには当時婚約者がいた。

 オルヴィス帝国の第一皇女であるラヴィニアだった。

 彼女もお茶会に参加していて、ルカルドと仲良さそうに過ごしていた。


 私はお茶会中ずっとルカルドの事を目で追っていた。

 だから気付いてしまった。

 ルカルドがラヴィニアを見つめる瞳はとても優しく、時には頬を僅かに染めて照れていた事を。


 私にとっての初恋は一瞬で終わった。

 相手が皇女なら勝ち目なんてあるわけがない。

 だから私は諦めることにした。


 だけど…お茶会から数か月後の事だった。

 ルカルドの婚約者だったラヴィニアの死が伝えられた。

 信じられなかった。


 私はすぐにお父様にお願いした。

「私、婚約するならルカルド様がいいです」と。

 内気な私が自分からそんなことを言い出したことにお父様は驚いていた。


 私のお父様は野心家だ。

 最初は驚いていたけど受け入れてくれた。

 おかげでルカルドが新たに婚約者を探すまで、私は他に婚約者を作らなくて済んだ。

『結婚するならルカルド様がいい』その言葉に嘘は無い。


 数年後、ルカルドの婚約者を決めるお茶会が開かれ私は参加した。

 そして漸くルカルドの婚約者候補の一人になることが出来たのだ。

 だけどまだ候補の中の一人だ。


 あの時から私はずっとルカルドのことだけを見て来た。

 私が誰よりもルカルドの事を分かっている。

 だからきっと私を選んでくれる、そう信じていた。


 あの時までは――。




 15歳になり、魔法学園への入学が決まった。

 この学園にはルカルドも入学して来る。

 これからは毎日ルカルドに会えるのだ、こんなに嬉しい事は無い。


 毎日傍に居られる、そう思っていたはずなのに。



 ルカルドはシンリーと呼ばれる平民の女と仲良くしていた。

 気付けばいつも、いつもいつも、あの女と一緒にいる。

 しかもシンリーはかつてのルカルドの婚約者だったラヴィニアの面影を感じさえる。

 だから余計に許せなかった。


 後から現れた女に、しかも平民の分際でルカルドに近づくあの女が許せなかった。

 ルカルドは私のもの。

 絶対に渡さない!


 やっと、もうすぐルカルドと婚約出来るのに邪魔なんてさせない。

 だから私はあの女に近づいた。



 私のルカルドに近づいたこと、後悔させてあげるわ。

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