8.他の植物へ
「トマトの会話か……そんなことがあり得るのか?」武田さんが興味深そうにデータを見ていた。
「もしホントに会話しているなら大発見だな。もう少し分析してみよう。それとトマトだけがこんなことになるのか、他の植物でも試してみたいな」
「わかりました、屋上にあるナスやレモンの木の根元にもセンサーを埋めてみます」
僕は双方向通信型のセンサーを色々な植物の根元に埋めてみた。
「今他の植物でも試してる」
「植物が会話するなんて不思議ね。何を話してるのかな」
「そうだね、内容を聞きたいね」
「そっちの土はいいかい、とか聞いてるのかな?」
「かもね」
他の植物の根元にセンサーを埋め込んでから2週間程するとセンサーのデータに変化が現れた。トマトがナスやレモンと交信を始めたのだ。お互いに時間差を持ちながら波形が行き来していた。しかし相変わらず波形の意味はわからなかった。意味を読解するには波形のデータを採取しながら細かく分析をする必要があった。
「こういう分析にはAIが有効かもな。知合いのAIの研究者に連絡してみるよ」武田さんがサポートしてくれた。
「ありがとうございます。とても僕の手には負えそうにないのでお願いします」
波形の細かい分析はできなかったが、僕は引き続き波形とトマトなどの生育状況の関係を注視することにした。昼と夜、日照の状況によって波形は違うようだった。