1.僕の仕事
夏の陽射しは強かった。その強い陽が当たりトマトの実の赤さがいつもより輝いて見えた。僕は額から汗をたらしながらトマトの生育状況やセンサーの状態をチェックした。トマトの根元に埋め込まれたセンサーを掘り出し反応をチェックし、調子の悪いセンサーは交換した。ここは東京の都心にあるビルの屋上だ。ここにトマトの試験農園を作り、センサーを利用して農作物の栽培を最適化することを研究していた。このビルの中に大学の研究室があり、僕はそこの助手としてこのテーマに取り組んでいた。一通りセンサーの確認と交換を終えて僕は階下の研究室に戻った。
「北村君、どうだい、センサーの調子は?」助教授の武田さんが声をかけてきた。
「はい、大丈夫そうです。何個か壊れてる物がありましたけど交換したので」
「壊れちゃうのも実用化には問題だから、センサーのメーカーに原因を確認した方がいいな」
「はい、そうですね」
僕は冷蔵庫からお茶を取り出しながら答えた。お茶をコップに注いで僕は自分の席についた。冷えたお茶が喉を通ると気持ちがよかった。スマホを見ると詩織からメッセージが入っていた。
「今日もこっちは天気がいいよ。今日もイルカの観察に行ってきた」
「いいなあ。またイルカに会いたい」
「直樹の方はどう?」
「こっちも天気はよくて暑い。さっきまで屋上で作業していて汗びっしょりだ」僕は返事した。