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第52話 冬休み突入

「試験を返すぞ!」


 担任からのこの言葉にクラスメートたちはざわめく。今回の期末試験が遂に返却されるのだ。


 俺は、眼中にない存在であったため、そんなことを言われようが『そうですか』くらいにしか思わない。


 なかなかに心が荒んでるな、俺は。


 俺は、自分に対し、そう評価を下すが、徳川や日下部には何言ってんだ?とそう言われそうだ。


 今回の期末試験では、本格的に勉強し、良い結果を残したいと徳川に言われ、俺はそれに付き合った。


 元々、教えるつもりではあったが、徳川の中にも新たな目標が構築されたのだろう。今の順位では満足できないみたいな。結果はどうあれ、前よりは上がっていることだろう。


 模擬試験もやらせたしな。期末試験なんかよりは確実に難しい。そんな問題をドバドバ出したからな。


 徳川はやってる最中、何度頭抱えていたのやらか・・・・。


 結果もそうだが、徳川の頑張りがやはり一番大切なのだと思う。努力をしてきたのだと自分の中で自信につながるようなそんなものがあれば、勉強意欲にも繋がり、より良い結果を残せると俺は思う。


 何事も挑戦。やってみなければどんな答えが出てくるのか分からないから。


 努力したと思い込んでいるだけではダメだ。他人から努力してるな、そう言われたとしても勉強や部活をやめてはいけない。慢心を抱くことも余裕をぶっこいているのも。


 継続は力なり。


 続けていけば、それは自分の力となり、将来必ず役立つとそう言いたいのだ。


 学生時代を終え、何年か経った後にこの日を思い出して


『俺って学生時代、すげえ勉強してたんだぜ!』


 そう胸を張れるように。今は分からなくていい。今、理解できなくていい。後になってから分かることだから。


 俺自身が学んできたこれまでの知識はなんのためにあるのかを。


 ◇


 期末試験が完全に終わり、今年ももう終わりが見えてきた。


 年末が好きな人が世の中には多くいるそうだが、俺は平日との違いがないのではないのか?と思っていたりする。

 

 部活動も年末、正月と休みらしく、徳川がクラスメートとおみくじ買おうぜ!と言い合っているが、おみくじいらなくね?


 俺だけかもしれないが、おみくじは基本買わないようにしている。なぜかと言うと俺みたいな呪われし人間が神頼みなど意味があるのかという皮肉れたことが理由だ。


 毎年、りずはが行きたい!と言ってくるので俺としてはため息をつきながらもなんやかんやでついていくというよくもまあわからないことをしている。


 ホームルームが終わると俺は席から立ち上がり、廊下へと歩いていく。すると小田切とすれ違った。小田切は俺を睨みつけるかのようにしてくるが、俺は無視する。小田切とは大して仲がいいわけでもないし、会釈し合うような関係ではない。絶賛喧嘩中のようなものだしな。

 模試での決着は未だについていない。不完全燃焼の状態なのだ。


 イライラしたところで状況が変わるわけもなく、俺はいつもの平穏な日々を過ごしている。

 勉強もいつものようにしているし、模試対策をガチでやらないとと言って勉強時間を増やすようなことはしていない。何事もいつも通りが一番だな。


 小田切が何を思っているのかそんなことは知らない。が、俺としてはここは挨拶でもしておくべきなのだろうか?

 

 分からない。だが、一応しておくか。


「よ、小田切!」


「・・・・・」


 まさかの無言!


 予想外だ。小田切のことだから喧嘩でも売ってんのか!くらい言ってくると思っていたのだが、何も言わないとは。さては偽物だな。まあ、ありえないな。普通に考えて。


 僕は、切井が声をかけてきたことに苛立ちを覚えていた。気安く声をかけるな!そう言いたいところではあるが、前回の模試では同点だった。文句を言おうにも言えない状況だ。


 なんと答えればいいのか。


 分からない。が、仲が大していいわけではない。無視していれば良いのだろう。


 僕は、そう判断し、廊下をスタスタと歩く。


 俺は、小田切がスタスタと早歩きに去っていこうとしていることに不愉快に思った。声をかけてやったのにも関わらず、無視するとはどういうことだ。


 俺は、再度声をかけた。


「小田切!」


 小田切は俺の声に応じることなく帰ってしまった。


 ◇


「あのヤロー」


 俺は憎々しげに声を出す。小田切に無視され、速攻帰られたことに腹を立てているのだ。


 人に無視されたりするとイラッとする人も世の中にはいる。短気だとかそんなことではなく、普通のことだ。


 世の中、いろんなヤツがいるとそう一括りにしても良いのかもしれないが、俺はあまり好きではない。小田切のあの態度も含めて。


 仲が良い悪い云々の話ではないのだ。人として最低限度の関わりがなければ、生活などできない。どれだけ嫌がろうが、そんなことは社会では通用しない。世の中そんな風に出来ているのだから。


 先程のことを知らない日下部は戸惑いを隠せずにいた。


 まあ、そうだな。状況も分からず、こんな態度取られれば戸惑う。


 日下部の場合、それは顕著に現れ、細かいところまで気にしてしまう。本人は無自覚だろうが。


「どうかしたの、切井くん?」


「いや何、さっき小田切と会ってな・・・・」


 俺は、小田切と会い、今に至るまでの話をした。


 日下部は聞きながら、へーとかふーんとかなんか腹立つな!


 俺は、最後の方はイライラしながら話した。


「つまりこういうことだね。小田切くんに無視されてイラッとした」


「そういうことだ」


 なんだ分かってんのかよ。


「それってさあ、小田切くんとお話したかったってこと?」


「なぜ、そうなる!!!」


 やっぱ理解してねえ!話聞いてないのか、日下部!


 俺は、日下部を睨みつけるかのように反論する。


 しかし、日下部はわかってるわかってる、なんて言い、俺の話を聞こうとすらしない。


 コイツ、マジで何なんだよ!!!!!


 ◇


 それから日がどんどん経ち、


「明日から冬休みに入ります。栄光高校あるまじき行動はしないよう心がけ、楽しんでください。もちろん、確認試験は冬休みに明けにあるので勉強もやるように」


 遂に始まる、冬休み。


 昨年は家から出ずに勉強に明け暮れていた。なぜかと言うとりずはがインフルエンザにかかったから。


 インフルエンザでは一週間ほど家から出ることが出来ず、冬休みは結構短いものであるため、旅行になど行くことはできなかったためだ。


 インフルエンザにならないためにも予防接種を受けるなど対策することが必須だ。まあ、受けない人はクラスメートにも多くいると思うが。俺は、受けてる。そういうところは真面目なのだ。


 今年、りずはがインフルエンザにかかるかどうかは分からないが、もし、旅行に行くという話が持ち上がっとしたら俺は必ず断るだろう。

 小田切との勝負。


 時間はあまりないのだ。勝てるかは分からない。でも、勝たないといけない。


 俺自身のためにも。小田切のためにも。


 ◇


「明日から冬休みだな、切井!」


「そうだな、徳川。でも、お前の場合、部活があるんじゃないのか?」


「それもそうだけどよ・・・俺としては切井とどっか遊びてぇな」


「遊ぶねぇ・・・・・・」


 俺は、外遊びは好きではない。どちらかと言うと嫌いだ。


 過去の俺はとんでもなく外遊び大好き人間であったが、今はそうではない。


 冬だと寒いし、外出るのダルいし。とにかく外遊びは嫌いだ。


「せっかくの冬休みだぜ。遊んでなんぼだろ」


「いや、勉強してなんぼだろ」


「遊んで勉強してなんぼだろ」

「遊ばないでなんぼだろ」


「遊び!」


「勉強!」


「・・・・・なんの言い争いしてるの?二人とも?」


 日下部、お前いたのか。


「お前いたのか、日下部」


「ひどい!ひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどい!!!!!」


「ああもう、分かったから。すみませんでした!!」


「切井、お前・・・・・・」


 徳川の呆れた声が聞こえたが、俺はそんなことより気にしなくてはならないことがある。日下部のことだ。


 ああもう、めんどくせー。日下部めんどくせー。




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