表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/173

第51話 次なる戦いに向けて

 模試の結果がまさかの同点というなんとも言えない結果で終わった。


 仕切り直しということで次の模試で白黒つけようということに小田切と決めた。


 俺としては今回の模試で決めたかったのだが、上手くことが進むということはない。負けないだけ良かったと言えばいいのか。


 小田切はそう捉えなかったようだが、あいつの場合、何を考えてるのかよくわからないしな。初日から犯行声明言うだけはあるな。


 俺は、また再び模試対策へと戻った。日下部と徳川、りずははよく頑張ったと言ってきたがまだ終わってないんだけどな・・・・・。なんとも言えない。


 机でカリコリと鉛筆を動かし、勉強をしていく。やはり時期も時期であるのか、難しい。


 模試は、回数を重ねていくに連れ、難易度は上がっていく傾向がある。


 やればやるほどにパワーアップしていくということだな。


 そのため、後半になるに連れ、点数は取りづらくなり、偏差値もその分減るかというとそういうことはない。


 点数が全体で取りづらくなるのだから、平均点もまた下がる。


 偏差値が下がることは勉強しないことだ。


 そういう風に言う親もいるかもしれないが、それは間違いである。


 模試での勉強はもちろん試験勉強の延長だ。より発展的な問題を解くことになるという、ただそれだけのこと。


『模試対策やってるから普段の勉強できてないわ』


 クラス内にこういったヤツはいないか?

 コイツは単なるアホだ。そもそもの段階から間違っている。模試対策やっててなぜ普段の勉強内容ができない?WHY?口だけのヤツはあてにしないほうがいい。このセリフを吐いたヤツはつまり自分は勉強してませんと言っているのだ。この返事には、『あっそ』とか『俺もしてないわ』とか。これ、ダメな。

 この返事はこうでないとな。


  『うるせぇ、バーカ』


 勉強を頑張るとそう言うヤツは多くいる。勉強とは頑張ってすることなのか?俺は最初にそう問いたい。勉強するとはどういうことかそいつらは理解できていないのではないのか?勉強を甘く見て、赤点取ってヘラヘラしてるのが賢いのか?そんなことはないだろ。どれだけバカだとしても限度がある。

 勉強は努力すればどんなヤツでもできるようになる。俺が変なのではない。やらないヤツらが変なのだ。


 世の中、全てが学歴で決まるかとそう言うと語弊があるが、ないのとあるのとではまた違うだろう。

 勉強が出来ればよき大学、よき職業に就ける。

 そうすれば自ずと収入が増え、金持ちだ。まあ、そんな上手くはいかないがな。


 小田切は、金持ちを目指している風には感じないが、それでも金は最強だな。


 閑話休題。


 小田切は、学校の現状を変え、学力向上を図りたいと考えている。無論、今の小田切のやり方では絶対にできないがな。


 しかし、小田切の言いたいことも分かる。


 栄光高校は優秀な生徒が多いとされている。現状はそうではないが。そのことを知り、辞めてしまう人もいることも確かだ。


 俺も最初の模試でトップを取ったとき、この程度かと思ったことも確かだしな。


 それでも俺は変えようとは思わない。


 今の学校の状態に満足することはないが、変えようとするのではなく、自分から変われば良い。それだけのことだ。


 全てが完璧な学校などあるはずがない。どこかで欠点があり、また長所もある。それを認め合って初めて学校生活というものが生まれる。まあ、俺が言ったところで説得力の欠片もないのだが。


 小田切のような学校の風紀を乱すような輩は人に嫌われ、避けられるだろう。


 人の輪に入ろうとせず、独りよがりのことをしていても埒が明かないのにな。


 一人で全てができるわけではない。勉強においてはどうかは分からんが、小田切のやり方は見ていられない。


 過去の俺と似ていると俺は勝手に考えている。

 小田切が前の学校、または更に前、つまり “ 中学時代 ”に何かがあったのか。俺も思い出したくない生活を送ってきた。所謂、黒歴史だ。


 人に聞かせたくないようなことが必ず一つや二つ、三つまたはそれ以上。何かしら人には言えない秘密というのがあるだろう。


 別にそれについてとやかく言うつもりはない。聞くつもりも同様にない。


 でも、俺は、こと小田切に関しては気になってくる。

 俺と似ている境遇であるのならそれ相応のものがあるはずだ。


 俺は、過去に出会ったあの“ 女の子 ”。


 小田切は一体、何なのか。


 分からない。分からないがこれから知っていけばいい。模試で勝ってな。


 ◇


「徳川、お前、前回の中間で終わりじゃなかったのか」


「いや、ここだと集中ができるからさ」


「自分の家でやれよ」


「フフ、とか言いながら徳川にお茶出してるね、切井くん」


 いつものメンバーと言って相違ない。


 俺の部屋には徳川と日下部がいる。模試が終わったことで年末が見えてきた今、また期末試験がある。

 期末試験は前回の中間試験同様の難易度で模試より簡単目といったところか。ところどころ、難しい問題はあるが、俺からしたら簡単もいいところだ。

 期末試験対策なんかより模試だ。


 何かという言い方はあまり良くないが、俺にとってはそんなものだ。成績も重要視している俺だが、こと体育はそこそこでいいと思っていたりする。苦手ではないと前にも話したと思うが、こう見えて持久走に関しては無類の速さを誇る。自分で言うとただのイタイやつだがな。


 徳川がなぜ俺の部屋にいるのか。それはさきほど徳川自身が言っていた。


 落ち着くと。


 まあ、俺の部屋には何もないと言うことはないが、他人からしたら何もないと同然なのか?

 勉強机に参考書。ぶっとい本。気に入って入るのだがな・・・・・。


「たくっ。遅くなる前には帰れよ」


「お前は俺の母ちゃんか何かかよ、切井!」


「うるさいな、徳川。少し静かにしろよ」


「お、おお。悪い。・・・・・・何か釈然としねぇ」


 徳川は前の模試で学年25位にまで上がっていた。期末試験にもおそらく余裕のようなものがあるのだろうか。


 俺としてはもっと上位を狙ってもいいのではないかと思うが、徳川が満足しているのなら、俺が余計な口出しするのは良くないだろうな。


 感覚は人それぞれだし、満足度もそうだ。俺なら、徳川の成績で満足なんかしないがな。むしろ、恥ずかしくて外歩けないな。


 期末試験についてはこのくらいで次の戦いとなる1月の模試。


 ここでは主にどのようなことが問われるのか。

 そう言われると過去問解けよ!と俺としては言いたいところだが、まあいいだろう。


 例年、難しい問題が多いが最初の大問1はほぼほぼ簡単だ。ここで点数を落とすことはかなりこの後の問題を解くことに支障をきたすだろう。計算問題が多くここでは出されるため、平均的に満点を取る人も多い。ワークで計算問題に多く取り組むことをオススメする。


 より良い結果を残すためにはやはり発展的な問題に挑戦していくことが良いだろう。模試の過去問でやるのも良いが、それだけでなく書店で売っている難易度高めの参考書なんかをやってみることもいいだろう。俺はコッチを良くやるな。


 人それぞれのやり方があるのだから、一概にこの参考書は良い、悪いとかは俺は言わない。クラスメートにもそんなことを言うヤツはいると思うが、それはあくまでソイツ自身の話だ。聞いた側がどう捉えるのかはその人次第。まあ、聞くに値しないな。

 そういった参考書に関する話などは教科担当の先生に聞く方が良いだろうな。より専門的な知識を大学で学んだ所謂、エキスパートなのだから。


 参考書の良し悪しを心得ているのではないのか。これも俺の考えで参考程度にしてくれ。


 徳川と俺がグダグダと話していると日下部が話に入り込み、より騒がしくなった。一人が入っただけであるはずなのにこれだけうるさくなるとはな。日下部、恐るべし!


「切井くん、今何か失礼なこと考えなかった?」


「何言ってんだ、日下部。俺がそんな面倒なこと考えるか?バカバカしい」


「ふーん。そうなんだ」


 なんだコイツ。喧嘩でも売ってんのか?しかし、日下部の最近の情緒不安定振りにはアキアキするな。正直、鬱陶しい。


 俺が日下部にそんなことを言えるわけもなく、ウヤムヤになるのだが、日下部はなんか分かってそうだった。


 徳川が「ここ分かんねぇわ。教えてくれ、切井」そう言ってきたタイミングで日下部との会話は一旦終了。


 俺は質問された問題に簡単な解説を入れながら、どう解くのか、どうしてそうなるのかを分かりやすく説明していった。


 ◇


 午後七時。


 やっとのことで徳川が帰り、俺と日下部は夕飯の時間となった。


 腹が減ったな。徳川が家にいたから和菓子とかあったがほとんどアイツに食われたしな。俺、ほとんど食えてないな。


「ハア」


 ため息をつくが、日下部はその俺の様子を見て、


「どうしたの?」


「いや、腹が減ったなと思ってさ」


「そう言えばそうだね。私もお腹空いたよ」


 日下部は俺の答えにニヤニヤとしながら答える。

 何、ニヤついてる。


 俺の答えが変だったのだろうか。腹が減った。事実そのままだ。おもしろ要素なんてかけらもない。なのに何なのか。


 俺の部屋の片付けを簡単に済ませると一階に降りていく。一階では、すでにりずはは夕飯を食べてしまっているのか、テレビをつけ、ギャハハと笑っている。


 りずは、下品だぞ、笑い方が。


 妹の普段見ることがないような様子に俺は唖然とするが、日下部が当たり前のような対応をしているのを見て、切り替える。


 日下部を見習ってスマートな対応をしないとな。


「りずは、夕飯の用意を頼む」


「えっ!お、お兄ちゃんいたの・・・・・!」


「遂に存在を否定された!」


 マジかよ。実の妹にお前、存在してたのなんて言われる日がくるとは・・・・・・・・。今日はなんて日だ・・・・!。

 悲嘆に暮れているとりずはが顔を赤くしたまま俺に聞いてきた。


「その・・・・いつからいたの?」


「いつからってついさっきだな」


「ふぬぬッッッッッッッッッッッッ!」


「どうした、りずは!!!!!!!!!」


 りずはがショートしてしまったことに驚きと戸惑いを隠せず、慌てる俺。


 しかし、日下部は理由を知っているのか、フフフと不気味な笑いをしながらりずはを部屋に連れて行く。


 え?なに?結局どういうこと?


 よく分からないけどりずはがショートしました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ