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【過去編】第2話 体育

 キンコーンカンコーン。定番とも言えるチャイムの音が聞こえる。


 俺は教科書をしまうと次の授業が何なのかを確認する。


 ゲェ!


 俺は思わず顔をしかめた。


 俺が顔をしかめる原因となったのが次の授業が体育であることだ。


 俺は別に体育が嫌いというわけではない。運動自体も苦手ではないしな。だが、今は受験シーズン。怪我でもしたらと思うと俺は冷や汗をかく。


 受験を控える今、体育をやることは俺としては、間違っていると思う。怪我をし、それで受験を受けられなければ、そいつの人生が狂う。学校側はそのことを理解した上でやっているのか。やっているのなら、なお、一層たちが悪いがな。


 わかっているのにも関わらず、俺らに体育を許容させるとか、頭おかしいのか?


 クラスメートの奴らもアホの集まりのようなものだが、学校側もだな。


 まあ、どうでもいいか。


 体育の成績を取れれば。


 だがそれもまた難しい。


 俺のクラスメートはほとんどが部活に入っていたため、運動能力は高い。俺は部活なんてどうでも良いものには入っていないが、それでも、やはり大きな運動能力差はある。


 体育の評価はある程度であれば良いと考えているから怪我しない程度に手を抜くか。


 俺はそう思い、体操着に着替えるのであった。


 ◇


「はい、それでは授業の方を始める。挨拶」


「起立!礼!」


「「「「「お願いします!!!」」」」


「はい、お願いします」



 いつも思うのだが、なんで体育のときの挨拶声低くするん?


 ◇


 今日、俺たちはまず体力テストとやらをやらなくてはならないということで50メートル走やボール投げなどなどをやらなくてはならない。


 俺は取りあえずやるという姿勢でやっている。タイムだとか記録やら気にするような人間性は持ち合わせていない。


 やる気だけは先生の前ではあるように見せているため、クラスメートから陰でゴニョゴニョ言われるが。


 人の視線を気にするなどバカがやることで俺はバカではない。勉強できるしな。


 ひとりでにそう思った。


 俺は記録を取り終えるとあとは見ているだけで良くなった。


 運動部であった奴らが記録が気に食わないと言うことで何度も記録を測り直したりしているが、意味はあるのか?


 俺としては十分な記録であるように感じるが、人それぞれだろう。


 そんなとき、一人の坊主頭の男が


「切井くん、君は今の記録で満足しているのか?俺にはそうは見えない。意欲ある生徒は今もがんばって記録を伸ばそうとしているんだ。君もやろうぜ」


 何を言っているのだ、コイツは。


 先生の話を聞いていないのではというセリフを履くこの坊主は俺の逆鱗に触れた。


 体育の授業自体俺にとってどうでもいいものであるのに自分の意見を押し付けるとは。いい度胸してるな。


「俺はもう今ので満足している。時間もあまりないのだろ?俺なんかに構うより記録とやらを伸ばすのに専念したらどうだ?」


「僕はもともと野球部だった」


 頭見れば何となくわかるな。


「野球部ではとにかく一試合一試合を大切にしようと練習に取り組んできた。君だってそうだろう?なんの部活に入っていたか知らないけどそれでもたくさん努力してきたはずだ。もっと本気を出そうよ。僕たちと一緒に」


「・・・・・・・・・・・・」


 俺は坊主頭のヤツのことを過大評価していたようだ。ここまで“ バカ ”だとは。


 見ているだけで恥ずかしくなってくる。なんでこんなやつと会話などしてしまったのか。俺は今になって後悔する。もっと頭のいいやつと思っていたが、ここまでか。


 俺は立ち上がると


「おお、遂にやる気になってくれたか。頑張ろう」


「何をだ?」


「え?」


「そもそも俺は部活になど入っていない」


「・・・・・・・・・・・・」


 信じられないものを見たかのように俺を見てくる。

 しかし、俺はその視線がより一層イライラさせた。


「お前に何を言われようがどうでも良いが、ここで一つ言っておく。俺に話しかけるな」


「・・・・・・・」


 俺はそう言うとその場から立ち去った。


 授業はもう終わり、俺は教室へと向かう。


 俺は一人もそもそと着替え、勉強を始めた。

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