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第31話 俺はいつでも旅行する17

「そうですか、では単刀直入に・・・・・・・・“お前ってバカだよな”?」


「・・・・・・・・・・・・・・・はぁ?」


 ◇


 俺は青年に向かってそう言い、青年の反応を見る。うんうん。まずまずだな。ここで冷静さを失わせて怒りに沈んでくれればそれでいいんだが、そうも行かなそうだな。


「ハァ、君とは初対面ではないけどさぁ、そう言うのは良くないんじゃないかな?友達できないよ?」


「あいにく俺には友達なんていませんよ。いなくても困ったことはないんですけどね」


「・・・・・」


「それにお前になにか、諭される言われはない。俺は、俺たちはホテルに戻る最中なんですよ。・・・・・・・どいてくれません?」


「・・・・・・・・・・・お前、うぜぇな」


「褒め言葉として受け取っておきますよ」


 俺はそう言いながら周囲を見る。一度会ったときコイツはヤクザっぽいやつを連れてきていた。見たときは護衛かなんかだと思っていたが、あんな坊主頭で人相悪いやつが護衛とは思えなかった。結局、追いかけ回されたしな。


 ・・・・・いなそうだな。どこか隠れる場所もここにはないし、いないと判断していいだろうな。


「それで時間がないんでしたっけ?あと、何分ほどここにいるんですか?具体的に教えてほしいのですが?」


「殺されたいのか?お前」


 俺は銃を引きつけられた。汗がポタポタ垂れてくる。


 俺はここまでの間である仮設を立てていた。それは何か。この青年は銃を使い慣れていないどころか、触ったことすらないのでは?という仮設だ。


 銃に触りなれているというのは少し変な感じがするが、この青年は銃を使うのは初めてなのだろうということだ。


 俺がうざったらしく話しかけている間に使い慣れていれば撃っていてもおかしくない。だって手元に武器があるから。しかし、青年は使わなかった。まあ、それだけで判断するのはあまりよろしくないことだと思うが、しかし、俺の中では確実だと告げている。


 だとすれば簡単だ。向かうは銃を撃ってこない。たとえ、どんな状況になろうと。




 俺はミスをしていた。銃の構造についての知識が不足していたことが原因だと後になってから思った。


 銃には引き金を引くことで撃つことができるわけだが、撃つためにはストッパーを外さなくてはならない。ストッパーがあるとどれだけ引き金を引いたところでカチッカチッと途中で固まってしまうからだ。だが、運悪く青年の銃はストッパーが外されていた。引き金自体かなりの力で引かなくてはならないのだが、青年はイラつきのあまり引き金を力強く引いたのだ。


 結果。


 俺の横っ腹に玉が当たり、


「えっ?」


 青年は驚いたように俺を見た。俺は急激な痛みが走り、傷を見つけようと腹を見ると、


“血で染まっていた”


「グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


 痛みでどうにかなりそうであった。俺はぶっ倒れ、土を掴んで痛みに耐えようとするが出来ない。


「お兄ちゃん!!!!!!!!!!!!」


 りずはの声が聞こえた。


「「当麻!!!!!!!!!!!!!!」」


 親父と母さんの声が聞こえた。


「切井くん!!!!!!!!!!!!!!」


 美愛さんの声が聞こえた。


 そして、


「・・・ぅまくん!!!!!!!!!!!」


 懐かしい声が聞こえた。でも、誰の声かは分からない。


 俺は意識を手放した。





 ◇


 長野に来て病院に入院するとは思わなかった。腹に今も痛みはあり、なかなか自分で起き上がることもままならない。銃で撃たれるなんて経験したことねぇからな。捻挫とか骨折なんかとはまた痛みのベクトルが違う。ズンズンくる痛みだ。


 あの後、俺は手術を受け、一日の間寝ていたそうだ。救急車がくる前までに峠を超えそうになったそうだが、野口さんの登場により俺は息を吹き返し、無事手術を受けたらしい。


 野口さんの武勇伝見たかったわ。峠を越えそうなやつの命を救うとか凄すぎでしょ。


 それだけに飽き足らず、あの青年を捕まえたのも野口さんらしい。


 なんでも俺を銃で撃ってしまったのに気づくや逃げ出したらしい。俺を救った直後に青年を捕まえに高速の速さでかけ走り逮捕。警察に送り届けたらしい。野口さん、やばいわ。もう、惚れるわ。うんマジで。


 起きてから日下部やりずはたちは泣き出していた。かなりの心配をかけてしまった。泣き止んだと思ったら説教をくらった。まぁ今回は素直に聞こう、心配かけてしまったのだから。


 その後、美愛さんから土下座を見せられたときはどうなるかとおもった。自分がするというのもあれだけど他人から土下座をされるのは正直かなりキツイ。だって俺の病室、俺一人じゃねぇから。俺以外に四人ほどいてその四人それぞれの見舞いの人がいてって結構な人数がいる中での土下座だ。周りは『えっ?何あれ?』『いやあの人、銃で撃たれたとかって噂だったぞ。先生がそんなこと言ってた』とかって言われてたし。というか、銃で撃たれて入院してるって噂ながしたその先生って誰?まあ、本当だよ。本当だけど、それ噂で流すってどうよ?ひどすぎでしょ。個人情報どこに行ったんだよって感じだろ。


 俺が起きてからいろんなことが起こりまくった。ハプニング満載だ。でもまあ、上手く進んだ。銃に撃たれるとは思っていなかったが、日下部を助けられたそれだけで十分だ。


 俺はその後、夏休みの終わり近くまで入院し、やっとのことで退院することができた。


「何から何までありがとうございました」


「いいえ、高い入院料まで払ってもらってますし、自分はこの通り無事ですから」


「本当にありがとうございました」


 美愛さんはそう言って顔を上げ、日下部の方を見る。


 日下部も美愛さんから視線を向けられているのに気づき、互いにちょっとしたことを話していた。


 俺は親父たちと話し、迷惑をかけた旨を謝った。


 ヤクザ集団の事件はこれで解決。


 ハプニング満載の旅行であったが色々とまた経験できたように思う。


 俺自身の未熟さもまた感じた。


 勉強不足だ。


 明日からまた勉強開始か。俺はふとそう思った。



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また、こういう話を書いてほしい!というものがあれば感想欄に書いてください。

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